実りの秋 2022

実りの秋、植物園では特に多彩な木の実・草の実が見られます。

今回はその中からのいくつかを思いつくまま並べてみましょう。


トチノキの実

中央広場に大きな実がたくさん落ちていました(2022.9.22.)。

クリの実より大きくてチョコレートをかけたお菓子のよう。

街路樹にも使われていますが、トチの実を見たのは初めてです。

 

果実は直径4cmほどの蒴果で外面にはいぼ状の突起があります。

果皮は3裂して褐色の丸い種子が1〜2個飛び出します。

 

栃の実はあくが強くあく抜きが大変ですが、ヒトは縄文時代からこれを克服し、餅や煎餅に加工、今なお各地で販売されています。

愛知にいた時は飛騨のお土産に「栃の実せんべい」をよくいただきました。

 

トチノキ

栃、橡、栃の木、 ムクロジトチノキ属の落葉大高木
学名:Aesculus turbinata
 分布:北海道南部から九州(日本固有種) 
 

トチノキは若葉が美しい(2022.4.20.)。

大きな掌状複葉の葉が対生。

 

太い幹から出た小枝。

 

5月には新緑が広がり、花穂が立ち上がります。

 

白い花は雄花と両性花が混じって咲くそうですが、高くて接写できません。

長さ25cmにもなる大きな円錐花序(2022.5.7.)。

 

開花初期。7本ほどの雄しべが突出して反り返ります。

雄花と両性花が混じって咲くそうです。

 

花の基部には黄色から紅色に変化する斑があります。



ムクロジ

トチノキムクロジ科、そういえばムクロジの実も宿題でした。

 

2018.12.19.ムクロジの実がたくさん落ちていました。

これがお正月の羽子板の羽根に使われていた実です。

 

その後も見上げましたが、高木で花も葉も撮れません。

今年はやっと落下した若い実と落葉した葉をを見つけました(9月30日)。

このべたべたした果皮は石けんのない時代にその代用品として使われたそうです。

 

ブナの実

ブナの葉については今春記事にしましたが、果実は宿題になっていました。

 

9月29日やっとブナの実を見つけました。

たった2個ですが落ち葉と一緒に並べて記念撮影。

ブナの実は4片に裂けた硬い殻斗の中に堅果が2個づつ入っていました。

堅果には3稜があり「しずく形」。

 

さらに11月17日もう1つもさもさした実を見つけました。中は空っぽ!

殻斗の外側は上の実では短い棘状でしたが、これは棘がやや長くてカールし、基部には葉状の鱗片が多数付いています。葉柄は短く約 1.5cmと。この個体は特に短い。

イヌブナは葉柄が長く(約4cm)下垂するそうですが、落果は見つかりませんでした。

 

シデコブシの実

昨春花を載せたシデコブシの実を見つけました。

昨秋できたと思われる果実がまだ残っていたのです。

袋果が割れて朱色の種子がとびだしたまま、落ちなかったのでしょう。

黒っぽくなっているのもありますね。

 

ウドの実 

午後の陽に輝く花かと思ったらウドの実でした(2022.9.27.)。

高さ2m以上あるでしょうか、周りのハギやオミナエシから抜きん出た高さです。

ウド

 独活 ウコギ科タラノキ属の大型多年草
学名:Aralia cordata

分布:日本原産(北海道から九州まで)・朝鮮半島・中国

花は8〜9月にヤツデに散形の小花序をつけるそうです(来年の宿題)。

 

白い花が散った後、果実は緑→赤紫→臙脂色→黒色と変化していくようです。

この日の配色は圧巻で日本の織物の模様が浮かびました。

 

昨年10月22日、上の株に近い道端で撮した実です。完熟すると黒くなって落下します。

私が見るウドは春の山菜、白くて太い根茎、サラダやきんぴらが大好物です。

しかしこんな姿を見ると食べたウドには申し訳ない気持ちになりました。

 

トキリマメ

吐切豆 マメ科タンキリマメ属の蔓性多年草
学名:Rhynchosia acuminatifolia
別名:オオバタンキリマメ(大葉痰切豆)
分布:日本(本州・九州)、朝鮮
 
2020.10.18.に撮ったトキリマメの赤い実。
先の尖った3小葉が付いています。
同属のタンキリマメも3小葉ですが菱形に近く、先端が尖らないようです。

 

美しい光沢のある真っ黒な実が美しい。

 

赤い鞘の果実には黒い種子が2個づつ入っています。

 

今年9月15日、やっと花が撮れました。

タンキリマメにもトキリマメにも止痰効果は確認されていないようです。

 

サンショウの実

山椒 ミカン科・サンショウ属の落葉低木

学名:Zanthoxylum piperitum

別名 ハジカミ

分布:北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島南部

 

木漏れ日の間にいきなり現れたサンショウの実。

赤い果皮から現れた艶やかな球形の種子の美しさに見惚れました。

 

これはうちの庭のサンショウの若葉と蕾。

葉は奇数羽状複葉で互性。長さ5〜15cm。

若葉は「木の芽」と呼ばれ、我が家でもタケノコ料理や豆腐田楽などに必需品。

サンショウは雌雄異株、我が家に植えた苗はいつも雄株で種子を見たことがなかったのです。

 

木の実・草の実はたくさんあってどれもこれも記録したいのですが、長くなりましたので今回はここまでにします。

 

 

マルバノキ

2022.11.2. 西日に庭が輝いていました。

左の高木はナツツバキ、右の低木はマルバノキです。

 

紅葉したマルバノキの葉に夕日が透けていたのです。

 

2018年9月、愛知の庭からツバキ(侘助)2本とナツツバキを搬送するとき、マルバノキとツリバナの苗も愛知で入手して積んできてもらいました。

マルバノキは庭の中央前部に植えられ、難無く根付いてすぐ紅葉しました(2018.12. 5.)。

 

ハート型の葉はそれぞれ趣のある紅色です(2018.12. 7.)。

 

マルバノキ

丸葉の木  マンサク科マルバノキ属の落葉低木
学名:Disanthus cercidifolius
分布:日本(中部地方以西・四国)・中国(揚子江中流域)
 

翌春、冬芽を守っていた赤い芽鱗が開いて若葉が覗きました。

 

葉が開き始めます。

 

展開した若葉。

 

堆肥効果で生育良好でした。

一部に紅葉を交えて美しい若葉が広がりました(2019. 5.14.)。

 

しかし、マルバノキと右のツリバナがこの調子で最前線で発育すると後の花たちは居間から見られなくなりそうです。

 

秋を待ってマルバノキは西側の塀の前に、ツリバナは北側に移植しました。

マルバノキはさすがに秋の紅葉は無理でしたが、花はたくさん咲きました。(2019.12. 4.)。

 

紅い花は直径約2cm。火星から飛んできたような花です。

 

翌年は予想通り、まわりの草花との生存競争になりました。

後ろの緑色の葉はモナルダ白、周りの白い花はオルラヤ ‘ホワイトレース’。

共に丈夫な花です。まずモナルダ白は後方に移植。

 

しかし、せめぎ合ったのは2020年のみでした。

1年草のオルラヤ ‘ホワイトレース’は零れ種でたくさん自生すると思ったのに、消えました。愛知では種子が飛んで毎年いやというほど生えましたが、気温のせいでしょうか。

 

昨年は美しい新緑の紅葉が見られました(2021. 5. 8)。

 

たしかに花より葉が美しい樹木です。

 

今年11月7日 秋の紅葉です。

 

蕾から花が咲くまでの過程が見られます。

葉腋から短い枝を出し、その先に無柄の両性花が、背中合わせに横向きに咲きます。(参照:朝日百科植物の世界8-182)。

 

偶々昆虫がやってきました。ヒラタアブの仲間のようです。

しかし手持ちのスマホ撮影ではなかなか焦点が合いません。

(追加:この花には悪臭があるとの報告がありますが、なぜか私はまだ感じていません。確かにアブの仲間が来ますから臭いがあるのかもしれません。)

 

以下は愛知の庭でマクロレンズで撮った花の写真です。

開花しまーす。

 

5枚の暗赤色の花弁が星形に開きます。

花弁は7〜8mm、雄しべ5本、雌しべの柱頭2本。

未開の紅い葯が円く並び、中央に白い柱頭が2本見えます(雌性期)。

 

花粉が出ています(雄性期)。

 

花弁脱落後、雌しべの子房は上位で2室。それぞれ数個の種子ができるそうですが、私の庭ではまだ実が出来たことはありません。

かって園芸店の店先でふっくらとした緑色の実を見たことがあります。


愛知の庭にマルバノキを植えたのは2006年。

それから既に16年もマルバノキと暮らしたことになります。

今回は古い写真も整理しながらマルバノキの魅力を記録しました。

 

 

はや5年目の秋の庭

モミジアオイ

秋雨の朝、零れ種から育ったモミジアオイが1輪咲いていました。

昨年は紅白2株植えたモミジアオイ、どちらが咲くのか楽しみでした。

肥料も支柱も与えなかったのに左右2株のシュウメイギクの間に紅1点!

 

モミジとはいうもののシャープな葉は軽やか。

後で気づきました。紅花は茎も赤く、白花の茎は緑白色でした。

 

素朴なシュウメイギクの間にはやはり紅がよかった。

 

常緑ヤマボウシ

右の木は常緑ヤマボウシ

転居後すぐ植えたからもう丸4年。ずいぶん大きくなりました。

 

初めの2年はほとんど花が咲かず、今年6月やっとまとまって開花しました。

 

そして熟した赤い実。

 

これが落ちるのを待つのは1才になったコーギーのチャーリーです。

しかしコードに引っ張られていて奥に行けません。

 

でもやさしいおばあさんが熟した赤い実を拾っておいてくれました。

「これ甘くて美味しいんだよ。僕だーいすき。」

 

「本当は僕は庭の隅やミニ菜園に入ってあちこち掘って探険したいんだ!

この間ハーネスが抜けて脱走したときは楽しかったなあ。

でも散歩中に大きなものを食べて病院に連れて行かれたこともあったから仕方ないか。」

 

足を拭いて家に入れてもらうとハーネスも外しておやつがもらえる。

 

セキヤノアキチョウジ
2年前 中庭の入り口に植えたセキヤノアキチョウジが大株になりました。

 

南に二階建ての隣家があっても、朝日が当たるこの隙間は適地でした。

 

アキチョウジとの違い:

アキチョウジは花柄が短く1cm、花柄の分岐が少ないのでこんなにふんわり咲きません。

 

愛知の庭から移植したセキヤノアキチョウジは常緑ヤマボウシの蔭になって今年は冴えません。代わりに2世がはや開花。花の色はやや濃い青紫色。

 

ホタルブクロ

さてこれはなんでしょう?

 

アオバナギンバイソウの大きな葉の上に壊れそうな網状のベルが並んでいます。

 

白花のホタルブクロでした! 萼だけ残ったのです。

ここは北側通路で通るのは私だけ? 花殻を切らずに残してありました。

 

一昨年ツバキ侘助の根元に愛知の庭からついてきたホタルブクロが咲きました。

 

昨秋はその1株にこんな姿が見られました。

ツリガネ形に下垂して網状になったホタルブクロの萼、初めて見ました。

今年は白花のホタルブクロでも見られないかと期待していたのです。

 

サクラタデ

サクラタデについては2019年11月のブログに載せましたが、その後もどんどん増殖(2021年11月15日)。

ミニ菜園のアスパラの領域に侵入しそうでしたので、昨冬ばりばり根っこを抜きました。

 

それでも今年も北の木塀からはみ出すほど元気に花を咲かせました。

 

3本のめしべが飛び出したかわいい花(長花柱花)は暴れても憎めません。

 

2018年9月当地へ来て4年、5年目の秋を迎えました。

月日の経つのがあまりにも早いので驚くばかりです。

つくばの庭と一宮の庭とは同じ植物でも気候の違いから育ち方が異なります。

それが面白くもあり、嘆かわしくもある日々。

杖と小椅子に助けられながら、もう少し楽しませていただけますように。

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

初秋のつくば植物園(2)

 

コシガヤホシクサ

越谷星草 ホシクサ科ホシクサ属の1年生の水草

学名:Eriocaulon heleocharioides
花期:7〜9月、 果期:9〜11月
自然分布:埼玉県越谷市茨城県下妻市(1994年絶滅)
 
「ホシクサ Eriocaulon cinereum 」は熱帯から亜熱帯に分布し、日本では本州から九州、沖縄に約40種 生育するそうです。
 
つくば植物園の中央広場に「コシガヤホシクサ」が大切に育てられている池があります。

2022年7月17日。浅い池に細い葉が束生していました。

 
植物園の解説:「ため池の岸辺、湿った河原に生育する一年草
湿地だけでなく水中でも生育し、水深に応じて花茎を伸長させる。」

水が澄んでいて メダカが周りを泳いでいました。

 
コシガヤホシクサは1938年に佐竹義輔氏が現在の越谷市、元荒川の砂州で発見。
しかしその後確認できなくなり絶滅したと考えられていました。
ところが1975年茨城県下妻市砂沼で再発見。
 
コシガヤホシクサは春から夏まではが水中生活、秋に花を付け種子を落とします。
砂沼は農業用灌漑池のため秋には水田への水供給が不要になり水位が下がるので種子が撒布され、翌春発芽できたのです。
しかし1994年の夏は渇水のため砂沼は秋にも満水状態を保持、そのためコシガヤホシクサは種子ができず絶滅しました。
 
この時偶々コシガヤホシクサを研究されていた東京農業大学 宮本太先生が種子を採取し育成中だったため、下妻自然観察クラブが引き継いで栽培されてきました。
さらに2008年からは環境省生息域外保全モデル事業として、つくば植物園で栽培中です。
 
2022年9月15日、私もつくば植物園でその花を見ることができました。

 

植物園の解説:

「地下茎は短く直立し、倒卵状で長さ10-15cm。

葉は束生し、線形で長さ7-15cm、幅3-4mm、先は鋭く尖る。

花茎は多数ついて高さ10-30cm。

頭花は水面上に出ていないと結実しない。」

 

花茎の天辺に白っぽい球状の頭花が付いています。

 

左下の頭花には総苞片が見えます。

花茎を齧ったのはオンブバッタ(右上)のしわざ ?

 

 こちらの区画ではまだ咲き始めたばかりです。

 

 頭花は灰白色で直径 6〜7mm。

 

頭花に星のような花が4つ見えます。

 

ぎりぎりまで拡大。ホシクサの花は3数生と。

白く輝いて見えるのは花弁3枚、萼片3枚。長さ約2mmの雄花のようです。

 

これはたくさんの雄花に取り囲まれて中心に雌花があるような?

コシガヤホシクサの雄花の萼は緑白色、雌花の萼は藍黒色で3個と。
 
『根茎があること、花茎に縦溝はあるが肋がないこと、雄花の萼は緑白色であるが、雌花の萼は藍黒色で葯が白色であること』などから新種とされたようです。
 
私はホシクサの仲間ではシラタマホシクサしか見たことがなく、解説がなかったらこの花も素通りしていたかもしれません。

 

下は2021年3月24日、つくば植物園のこの池で見たコシガヤホシクサの新芽です。

ここはきれいな水が湧いていますが、2008年からの砂沼の播種実験はウエットスーツ・ウエイト・ゴーグル・シュノーケルなどで完全装備しても濁った水を誤飲するなど危険な作業だったようです。

検索すると越谷市でも2011年から越谷市農業技術センターにおいてコシガヤホシクサの栽培が行われていました。

 

ミズアオイ

 水葵 ミズアオイミズアオイ属の1年生の水草
 学名:Monochoria korsakowi
 別名:ナギ(水葱)
   分布:アジア東部
 
この池にはミズアオイも栽培されていて同時に花を見ることが出来ました。
ミズアオイもまた万葉集にナギ(水葱)として詠われ、古くから食材として用いられてきたようですが、近年減少し、環境省RDBでは準絶滅危惧種に指定されています。

 

草丈20〜50cm、沈水葉は線形、抽水葉は心形。葉柄の先に光沢のある葉を付けます。 

 

 和名「ミズアオイ」は葉がアオイの葉に似ていることに由来。

 

9〜10月、花茎が伸びて青紫色の花を多数咲かせます(総状花序)。

花は3数生で花被片は6枚。

 

雄しべは6本。このうち5本は短く、葯は黄色。

1本は異形雄しべでやや長く、葯は濃い青紫色、この花粉で自家受粉するそうです。

それにしてもなぜこれだけ青い葯になったのでしょう?

 

花はこんなにたくさん咲くのに1日花。

 
ミズアオイの葉もオンブバッタに食べられています。
オンブバッタはむしろミズアオイが本命だったかもしれません。
万葉集には「醤酢に 蒜樢き合とて鯛願ふ 我にな見えぞ水葱の羹」と詠まれています。

「ひしおすにノビルをつきこんだ和え物と鯛を願っている私には見せてくれるな。水葱の吸い物なぞ!」

ミズアオイの若葉は食用にされたものの、あまり美味しくはなかったようです。


ミズアオイを検索中、「ミズアオイを震災復興のシンボル」という記事に出会いました。
東日本大震災の後、津波を受けた岩手、宮城、福島の沿岸地域に突如としてミズアオイの大群落が現れたそうです。
かつては水田雑草であったミズアオイは除草剤などにより減少していました。
地中に埋まったミズアオイの種子が発芽するためには、耕運などの撹乱によって種が地表近くに出てくることが必要ですが、津波がそれを担ったものと考えられました。
その後も「災害遺産ミズアオイ」を守る活動が続いているようです。

 

 
 
 
 

初秋のつくば植物園2022(1)

 

ヒガンバナ

 彼岸花 ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草 

 学名:Lycoris radiata

   別名:曼珠沙華マンジュシャゲ

 原産地:中国

 分布:北海道や東北地方を除く日本全土

 

9月15日、久しぶりに行った植物園は早くも秋の気配が漂っていました。

池の中央のつくばね橋を渡ります。

 

橋を左に曲がると池のほとりのヒガンバナがちらほら咲き始めていました。

苞に包まれた蕾をもつ花茎が20〜60cm伸び出し、苞が破れると直径10〜15cmの花が数個、外向きに並んで開花します。

 

6日後の9月21日、再訪。

橋の上から左を見るとあずまやの下が赤く染まっていました。

 

ヒガンバナは貫禄が出てきたあずまやとよく合います。

古くから日本にあったような景色ですが、ヒガンバナは古い時代の日本には無く、救荒植物とか、糊の原料として中国から持ち込まれたという説があります。

 

この花茎からは10個くらいの花が種小名radiata の「放射状」の意味のように球形に開花。

細長い花被片6枚は大きく反り返り、雄しべ6本・雌しべ1本が長く突出しています。

やはりヒガンバナには何か妖しい美しさがあります。

 

今年はヒガンバナの名の如くお彼岸に満開になります。

日本のヒガンバナは3倍体のため種子が実らず、鱗茎で増えるので全て同じ形態です。

 

この植物園のヒガンバナは池のほとりに増えています。

子供の頃住んでいた東濃地方ではヒガンバナは畔道の花、庭に植えてはいけないと言われていました。

球根に毒性があるから誤って食べないようにという配慮だったのでしょうか。

しかし水に晒せば毒性が失われることがわかり、飢饉の時は助けになったようです。

 

にわかにその花の間を乱舞する2つの黒い影!

 

動きが早くて上手く撮れない。

 

ジャコウアゲハですね!

 

この園には「コヒガンバナ」もありますが、確認が遅れて今年は花期を逸しました。

ヒガンバナは中国に自生する2倍体のヒガンバナで種子ができます。

ヒガンバナより早咲きで花はやや小型といわれます。

種子ができるかどうか、今後の経過を見たいと思っています。

 

 

シロバナマンジュシャゲ

    白花曼珠沙華 ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草

 学名:Lycoris x albiflora

   別名:シロバナヒガンバナ( 白花彼岸花

 分布:日本全土、済州島、中国

 ヒガンバナショウキズイセン(花は黄色)の自然交雑種といわれます。

 

園の西側通路沿いにはシロバナマンジュシャゲが植栽されています。

ここはよく通る道ですから葉の観察も容易です。

2021年10月4日 元気な葉が育っていました。さらに茂って冬を越し葉は5月頃消えます。

 

2022年9月15日 次々と開花中でした。まだ顔を出したばかりの蕾もあります。

 

花の咲き方はヒガンバナと同じです。

 

雌しべの先(柱頭)が紅い花もありました。

 

昨秋、花後を観察しました。

もしかして種子ができるかもと思ったのですが、やはり不稔でした。

 → 

 

 

ハナシュクシャ

花縮砂 ショウガ科シュクシャ属の多年草

学名:Hedychium coronarium

英名:ginger lily    →   ジンジャーリリー

分布:インド~マレーシア熱帯地域

   日本には江戸時代に導入。

 

良い香りに誘われて近づくと高さ1〜1.5mのショウガに似た葉が茂り、白い蝶のような花が咲いていました。

 

偽茎の先に穂状花序が出ます。

 

ジンジャー科の花の構造はとても難しい。

(以下、素人の記載ですから誤りがあるかもしれません。その際はどうぞお教えいただけますようお願いします。)

外側の細長い裂片が花冠、花弁のように見えるのが弁化した仮雄しべ。

 

この大きな唇弁(長さ・幅とも約6cm)が弁化した仮雄しべとは驚きました。

中央から飛び出しているのは1本だけ稔性がある雄しべ。

雌しべは筒状の雄しべの中を通り、葯の先端から緑色の柱頭が突出しています。

 

良い香りと花の美しさに魅せられてしばらく動けません。

下は雄しべの葯が開いて花粉が出ているところです。

この花はキューバニカラグアでは原産国ではないのに国花になっています。

香料の原料として栽培もされるようです。

 

隣に淡いオレンジ色の花が咲いていました。

名札を探しましたが見つかりません。ハナシュクシャの園芸種でしょうか。

 

同じような色の花がニクイロシュクシャと呼ばれていることもあるようですが、気の毒な命名に思えます。

花の構造はハナシュクシャと同じです。

 

1茎に咲く花の数が白花のハナシュクシャより多く、草丈も高く丈夫そうです。

ベニバナシュクシャ や キバナシュクシャもありますが、この色はサーモンピンクに近いかと思います。


繁殖は根茎によりますが、稀に種子ができることもあるようです。
また通る時覗いてみましょう。

この花も調べてみると難しく、また更新が遅れました。

 

チユウキンレン(地湧金蓮)

チユウキンレン(地湧金蓮)

 地湧金蓮 バショウ科ムセラ属の常緑多年草

  学名:Musa lasiocarpa

   英名:Chine Yellow Banana

  中国名:地湧金蓮

        原産:中国南部からインドシナ半島
 
 
1)みずほの村市場のチユウキンレン
今年6月、みずほの村市場の蕎舎さんの蓮池の南にチユウキンレンの大株を見つけました。
日当たりも栄養も良く、伸び伸び育っています。
太い茎に見えるののは偽茎で高さ60cm以下と。
(朝日百科植物の世界10-199)
大きな葉は長さ50cmほどの長楕円形。

 

左から眺めました。

確かに「地湧金蓮」の名の如く地面から湧き出た金色のハスのように見えます。

ハスの花弁のように見えるのは「苞」。

 

苞は直径20〜30cmくらいで、その付け根に数個の花が見られます。

同じバショウ科のバナナと同じ構造です。

 

残念ながら花は遅すぎて構造がよくわかりません。

朝日百科には「花序の基部に両性花と雌花が、上部に雄花がつく。花被片6枚、雄しべ5本」と記載されています。

下の写真では中心に雌しべが見えます。

 

もっと若い花が見たくて今月再訪しました。

しかし残念ながらヒマワリも撤去され、橋が閉じられていました。

中心部に新しい苞が育ち始めているようでしたからまたの機会のお楽しみです。

 

2)つくば植物園のチユウキンレン

実はこの花は淡路の花友達のお庭にあり、そのブログにしばしば登場して拝見していました。

チユウキンレンは2000年の淡路花博で初めて披露され、大変な人気を呼んだそうです。

 

2018年秋、私は当地に転居、つくば植物園にも小株があることを発見しました。

2018.12.27. 防寒対策でしょうか、綿帽子を被ったような姿でした。

 

植えられているのは大きな温室2棟の間の中庭、ミケリアの隣です。

その後は数枚の葉のみでしたから写真も撮らず素通り。

2021. 1.27. こんな哀れな姿、もう枯れてしまったのかと思いました。

しかし原産地では -10℃までも耐えた花ですから、苗を植えたときは防寒したものの、その後は -8℃になるつくばの低温にも無防備のままだったのでしょう。


2021. 6. 3. 確かに元気な葉が出ていました。

 

2022. 6. 5. 今年は初めて花を見つけました。

まさに地面から湧き出て開いた金色の蓮です! 隣のマンホールは興醒め。

 

花はひっそり、泰然自若。

中国では標高1000〜2500mの山の斜面に分布。

雲南省では農家の生垣に植えられたり、地下茎と偽茎が豚の餌にされたりするそうです。

 

今夏は暑くて植物園へも行く気にならず、空調頼りに家に篭っていました。

9月16日、涼しさに誘われて確認に行くと、こんなに葉が茂っていて驚きました。

 

偽茎は2本、既に花も数段咲いたようです。

 

柵もないので接近してスマホ撮影ができました。

既に花期終盤なのが残念です。

 

右上の花には小さなアリがたくさん集まっています。

蜜がたっぷり出ていたのでしょう。

 

やはり植物園に行くと元気が出ます。

最近は夏ごもりでフレイルが進んで、もう植物園も無理かと心配していたのです。

杖を手にスマホだけ持って園内に入ると、馴染みの植物が次々と導いてくれるように感じられ、あれもこれも確認したくなりました。 

それらはまた 次回に。

 






巨大水車とハス(藕糸蓮)

巨大水車

つくばには「みずほの村市場」という有名な農産物の直売所があります(1990年設立)。

ここには毎日地元の新鮮な野菜や果物などが並び、奥には園芸センターもあり、花や野菜の苗・鉢物・生花まで揃っていて、高齢になってから転居した私には誠にありがたいお店です。

さらに隣には「蕎舎」さんがあってこだわりの「常陸秋そば」がいただけるのです。

建物は150年前の農家を移築したという古民家、土間には竈(かまど)もあります。

ここ3年、コロナ禍のためお蕎麦が躊躇われるのが残念です。

 

建物の西側に直径7mの巨大水車があります (2022年4月14日)。

 

20年間、回り続け老いて苔蒸した水車ですがまだ現役でした(2021年9月)。

一回分の精米に48時間かかるそうです。

 

どこも古色蒼然! ゆっくり回っています。

 

今春はますます苔蒸していました(2022年4月14日 室内から撮影)。

店主はこの水車を再建すべきか否か悩まれたようですが、これを後世に遺す義務を感じ、リニューアルプロジェクトを立ち上げられました。

4月26日 解体工事開始。

こんな大きな木製水車を造れる職人さんはもう全国に数人しかないそうです。

 

総工費約800万円、クラウドファンディングで一部を補い、2か月後再建されました。

7月29日、すでに新しい水車がゆっくり回転していました。

右下は撤去した旧機の中心部です。

 

「藕糸蓮(ぐうしれん)」

   蓮 ハス科ハス属 の多年生水生生物

 学名:Nelumbo  nucifera

 

蕎舎さんの南側には毎夏ハスの花が開きます。

その向こうはひまわり畑。ここはひまわり迷路が楽しめるところです。

 

このハスは茨城県の蓮根農家 八島八郎氏が品種の改良を行い、藕糸蓮と命名された希少種だそうです。

 

藕糸蓮は花付きがよい八重の品種です。蓮根は採れません。

現存するハスは100品種くらいあるそうです。

2000年前の泥炭層から発掘された種子から芽生えて花開いた「大賀蓮」は一重です。

 

藕糸蓮の花は濃いめのピンク色。開花は7〜9月。

 

蕾の頃。

 

咲き始め。

 

花弁は100枚以上、小さい花弁は雄しべが弁化したものだそうです。

 

花弁がするりと落ちました。

 

藕糸織(ぐうしおり)

藕糸蓮の茎からは繊細な繊維が少量採取でき、これで織った織物を藕糸織といいます。

しかしこの繊維は蜘蛛の糸のように繊細で、製糸には複雑な手間がかかり、ミャンマーの藕糸織では10mの布を織るのにハスの茎が1〜2万本要るといわれます。

こうして出来上がった布は意外にも軽やかではなく、むしろ地厚の布で、飾りを付けて仏像にかけたり、僧の袈裟にされるのだそうです。

 

平成13愛子内親王のご誕生を祝い、土浦市八島農園の花蓮から300人のボランティアが蓮糸を取り出して織り、ゴヨウツツジの御紋を入れた藕糸織の袱紗に仕立てて献上されました。

 

碧筒杯(象鼻杯)

またここでは2009年から「碧筒杯」といって、この蓮の葉に酒を注ぎ茎を通してそれを飲む催しがありましたが、最近は行われていないようです。

碧筒杯は象鼻杯、蓮葉酒とも言われ、ハスの葉の茎と繋がる部分に穴を開けて飲み物を流し、漏斗状にして長い茎の下端から飲む遊びです。