コチャルメルソウ

コチャルメルソウ

 小嗩吶草 

 ユキノシタ科チャルメルソウ属の多年草

 学名 Mittella pauciflora

    分布:本州・四国・九州

 

チャルメルソウ属は世界に20種ほどあり、そのうち11種が日本で見られ、10種は日本固有種だそうです。

中でもコチャルメルソウは日本産チャルメルソウ属では最も広域に分布し、遺伝的 にも形態的にも多様であり、学問的にも興味深い植物といわれています。

コチャルメルソウとの最初の出会いは2019年3月24日のつくば植物園でした。

ニリンソウムラサキケマンの群生地の近くにカーペット状に広がる円い緑の葉。

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名札を見ると「コチャルメルソウ」、名前も印象的でした。

花茎らしいのが見えますが、残念ながら遠くて接写できません。

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わが家の日蔭の小径に合いそう、でも販売しているでしょうか?

ところが、昨秋近くの野菜市場の園芸コーナーにポット苗が2個販売されていたのです。

無事冬を越し、今春新しい緑の葉が広がりました。

こうして並べてみると上の植物園の葉と下のわが家の葉とは色や形が少し違いますね。

一部に斑が入っていて光沢も少ないようです。

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4月3日 いつの間にか花茎が伸びていました。

高さ10〜20cmくらいの花茎に花が数個づつ付いています。

コチャルメルソウとは小型のチャルメルソウ。

チャルメルソウは花茎が30cmくらいあり、もっと多くの花が総状につくそうです。

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花茎からラッパ状に突き出た花。

謎めいた花の形に惹かれて花の経過を追ってみましょう。

俯いていた蕾が横向きになって開花します。

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花の大きさは直径4〜5mm、5枚の花弁は奇怪に7裂して反っています。

花弁は一般には羽状と言われますが 魚の骨? 海藻? シダ植物? アンテナ? 

その外側に緑色の萼。

花弁の付け根に未開の雄しべの葯が1個づつ、合計5個ふくらんでいます。

雌しべは中央に小さく直立。

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葯が開いて花粉が出ると花はのっぺり平らな花盤になりました。

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花弁脱落後。雌しべの柱頭は2個、それぞれ小さな黒い帽子を被っているように見えます。

この下に子房があって種子が作られます。

文献によれば花粉は夜間キノコバエによって送粉されているそうです。

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このあと大きく変身! しかし、この間の変化を説明できる私の写真がありません。

次の写真ではもう種子が大きくなり、花盤がぱっくり開いています。

実は、子房には2個の心皮があり、2本の花柱の間の縫合線に沿って鐘状に開いたのだと。

そのため2個の柱頭は左右にほくろのように残っています。 

花茎には腺毛が密生。

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赤っぽい種子が整然と並んで成熟を待っています(蒴果)。

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完熟したチョコレート色の種子。雨滴散布されるのでしょう。

この実には古美術のような美しさを感じます。

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チャルメルソウは果実になった時の形が中国楽器のチャルメル(嗩吶)に似ているからと命名されたようです。

またしても失敗! 果実のラッパ状の画像がありません。これもまた来年の宿題です。

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葉は大きいものでは長さ5〜6cm、この苗には一部に斑ら状の葉があります。

また、つくば植物園のコチャルメルソウに比べて光沢が少ないようです。

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葉の面には細毛がびっしりありますが、裏にも葉脈に沿って細毛が並んでいます。

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葉を押しのけて株元をみました。細い匍匐茎が多数伸びています。

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これは、園芸店で出会ったコチャルメルソウの苗を庭に植え、観察した素人の記録です。

ラベルには「コチャルメルソウ」と書かれていましたが、栽培者は不明で園芸種かどうか

確認できていません。

 

参考文献

若林三千男. 1997. 朝日百科 植物の世界 5280-281 

 奥山雄大日本産チャルメルソウ属および近縁種(ユキノシタ)の自然史

https://www.kahaku.go.jp/research/researcher/papers/117922.pdf