シュウカイドウ
秋海棠 ウリ目シュウカイドウ科の多年生草本
学名:Begonia grandis
花期:8〜10月
シュウカイドウは意外にも外来植物でした。
園芸が盛んだった江戸時代初期の1641年(寛永18年)に中国から輸入され、群馬・栃木県以西に分布。
和名はバラ科のカイドウに似た色の花が秋に咲くことから。
その後もシュウカイドウ科のベゴニアは種々日本に入りましたが、それらは「ベゴニア」と呼ばれています。
草丈40〜60cm、葉は左右非対称、互性。葉の長さは20cm未満。
シュウカイドウは何故か愛知の庭には育ち難く何度か植えても消えました。
こちらの庭には昨秋植えましたが、容易に生育し、今年はたくさん花が咲きました。
花は雌雄異花同株。まず一つの花序の上の方に雄花が咲き、のち下の方に雌花が開花します。
下の写真では開花しているのは雄花のみ、下方の雌花には稜のある子房があります。
これはシロバナシュウカイドウ(変種)です。
雄花は大きい萼片2枚と小さい花弁2枚、雄しべは中央に球状に集まっています。
二枚貝のような蕾、中はどうなっているのでしょう?
小さな花弁2枚が窮屈そうに収まっていました。
雄しべの頭部には花粉が見えません。よくよく見たら側面に開口しているのですね。
またベゴニアは湿度の高いところに生育するため花粉は粉質ではなく粘質だそうです。
雄花は花柄のまま落花します。
雌花には三角錐状の子房、2枚の大きな萼片、1枚の小さな花弁、黄色い雌しべがあります。
遠くから見ると雄しべも雌しべも同じように見えます。
実はシュウカイドウの雌花は蜜を分泌していない!
そのため花粉を付けた昆虫が雄花・雌花の区別がつかぬまま、雌花にも訪花してくれるよう期待しているのだそうです。
雌しべは3つに分かれ、さらにそれぞれ左右に分かれて捩れています。
6組の捻れた柱頭は螺旋型とか豚の尻尾とか表現されていますが、これは昆虫についている粘性の花粉をこそげとるための形態のようです。
昆虫の気配がないと思って見ていた時、突然マルハナバチが訪れてくれました。
受粉成功、初めに咲いた雌花はもう三つの翼のある蒴果になりつつあります。
シュウカイドウは球根のみならず、葉腋に付く珠芽(むかご)でも殖えます。
すでに株元には小さい苗が多数育っていました。
葉の表面は緑色ですが、裏面は一般には薄緑色。しかしここのは赤色を帯びていました。
園芸種「裏紅秋海棠」だったようです。
シロバナシュウカイドウは葉脈が紅い。
荒い木柵の隙間から道路側へ花が覗きます。道ゆく人の目にとまるでしょうか。
一般にベゴニアは湿気の多い半日陰を好み、寒さに弱いのですが、シュウカイドウは耐寒性強く、つくば下ろしにも耐えました。
球根とむかごと種子により繁殖力旺盛、冬季は地上部は枯れますが球根が肥大し越冬します。
シュウカイドウは初対面、調べるほどに難しく、蕊の写真も撮りにくく難儀しました。
でもこれからは初秋の楽しみになるでしょう。
「秋海棠 西瓜の色に 咲きにけり」 松尾芭蕉