サラセニア

連日の猛暑と新型コロナウイルス第5波の中で強行されつつあるオリンピック。

こんな時にはと撮りためた写真の整理をすることにしました。

  

 サラセニア・レウコフィラ

サラセニア科ヘイシソウ属の食虫植物・多年草

学名:Sarracenia leucophylla 

 和名:アミメヘイシソウ(網目瓶子草)

原産地:北米南東部

 

2019年10月24日。

つくば植物園の中央広場の水辺で初めてこの植物と対面しました。

怪しくも美しい不思議な植物、誰もいない空間でゆっくり見ることができました。

葉は 高さ1mにもなる筒状で、上部には白地に紫紅色と緑色の網目模様があります。

お酒を入れる瓶子に似るとて和名は網目瓶子草。

しかし花のように美しい葉には捕虫嚢としての仕掛けがありました。

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 最上部の蓋の腹面や開口部の縁から蜜を分泌して昆虫をおびき寄せます。

ところがこれらの部分や筒状部の内壁には鋭い下向きの毛が生えていて、ここに入った昆虫は這い上がることができず、深くまで落ち、最終的には消化されてしまいます。

養分の少ない土壌から得られない窒素・リン酸・カリなどを吸収する仕組みだったのです。

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あ、ハエのような昆虫が入ってしまいました!

周りの捕虫嚢を覗くと底の方に昆虫らしい黒い影が見られ哀れ。

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美しくも怪しく恐ろしい捕虫嚢。

赤いのは昨年の捕虫嚢です(2019年11月27日)。

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冬の情景(2020年1月30日)。

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まだ紅紫色を保っている葉もあります。

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2021年5月12日、サラセニアは一変、花の季節を迎えていました。

1m前後に立ち上がった花茎の頂端に直径8cmもの赤い花が咲いています。

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太い針金のような 花茎と3枚の苞、5枚づつの萼片と花弁からなる花。

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華やかな赤い花。

上で水平に開くのは萼片5枚。下に垂れるのが花弁5枚。

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花弁が散ると花の内部が見えます。中央は花粉を出し終えた雄しべです。

その下のこうもり傘を逆さにしたように開いているのは何でしょう? 

なんと これは変形した雌しべの一部でした!

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花粉を出し終えた雄しべが散りつつあります。

雌しべの方は中央の帯緑色の塊が子房。続いて赤い花柱。

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その下にこうもり傘のように大きく開いているのは花柱板(追記 7/27 京都府立植物園情報より)。

花柱板の先端(傘の露先の部分)にある小さい突起が柱頭。 

昆虫が花粉と蜜を求めて入るとき、この柱頭に他花の花粉が付く。次いで雄しべに触れて花粉が傘の中に落ち、昆虫はその花粉を付けて他花へ運ぶという仕組みです。

この画像を拡大した時やっと理解できました。

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2021年6月17日 果実が大きくなり、花も葉も緑色を帯びていました。

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また新しい葉も出始めています。

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 果実は球形の蒴果。

秋までにゆっくり熟し、裂け目から500個ほどの種子が落ちるそうです。

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隣にもう一種「サラセニア  アラータ」がありますが、まだ花を見たことがありません。

アメリカ南部原産で網目模様が無い種です(2019年11月27日)。

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 2019年からの画像を整理するうちに柱頭が確認できて、やっと花の構造が理解できました。
サラセニア属にはこの他にもムラサキヘイシソウ、キバナヘイシソウなどがあります。

サラセニアの花は蜜や花粉でハナバチを呼び、葉は異臭でハエなどを誘い獲物とするという二つの昆虫利用手段を用いて生き延びてきた強者でした。

しかし今回この苗が通販で販売されていることを見つけ、またまた驚きました。