暑中お見舞い申し上げます。
今日も猛暑の日になりそうです。
せめてひとときたりとも涼しげにと今回は水生植物を取り上げました。
昨年12月つくば植物園の水生植物温室でガガブタの花を初めて見て感激しましたが、季節感が合わず保留してあったのです。
調べてみるとミツガシワ科アサザ属。
今回はつくば植物園のミツガシワ科アサザ属3種をまとめます。
学名:Nymphoides indica
分布:アジア、アメリカ、アフリカ、オーストラリアの温帯域、
日本では本州以西
ガガブタはかっては平野部の湖沼や溜池で普通に見られる植物だったそうですが、最近は著しく減少、各地で絶滅が案じられています。
ガガブタとは また気の毒な名前に思えますが、その葉を鏡箱の蓋になぞらえて「カガミブタ」とよんだものがなまったのだそうです。
スイレンのような葉の近くに清楚な白い花が咲いています。
水底から長い茎を伸ばし、長さ20cmにもなる浮葉を展開します。
(スイレンは水底に地下茎があり、そこから長い葉柄が水面まで伸びて葉を開きます。)
葉には短い葉柄(長さ1〜2cm)があり、その基部から花柄が束生し1〜2花づつ開花。
花ははかない1日花、夕方には水中に沈みます。
花の直径は約 1.5cm。一般には5弁、ここでは6〜7弁も多い。
花期は7〜9月ですが、ここは温室、真冬でも花が見られるのです。
花冠裂片の内側にたくさんの白毛があってこれがまた美しい。
雄しべ5個、雌しべ1個。
ガガブタにも花柱が短い短花柱花と花柱が長い長花柱花があり、両者が混生しないと結実しないそうです。これはどちらでしょう?
水中に長く伸びているのは茎です。
葉柄の基部に夏から秋にかけて根が変形して房状になった殖芽が形成されます。
この殖芽からまた長い茎が伸びて繁殖するのです。
米国産の「ハナガガブタ」はこの殖芽がバナナの房に似るので「バナナプラント」とも呼ばれるそうです。
左上は花が終わった後、種子が出来るかどうか、また見に行ってみます。
今はまだ暑くて植物園に行く気になれません。
ミツガシワ
三槲 ミツガシワ科ミツガシワ属の多年草
学名:Menyanthes trifoliata
ミツガシワについては既に 2019-04-18 の記事にしましたが、その後の観察を加えて再掲します。
今回は2022年4月19日のつくば植物園のミツガシワです。
中央広場からつくばね橋へ向かい、左の木道へ降りました。左側は一面のミツガシワ。
右側もつくばね橋の下までまた一面のミツガシワで覆われています。
ミツガシワは西シベリアでは斬新世(3800万〜2400万年前)から、日本でも鮮新世(510万年〜170万年前)末期から在ったそうです。
ミツガシワには雌しべの柱頭が長く突出する長柱花と、柱頭が雄しべの葯を越えない短柱花がありますが、この池のミツガシワは長柱花です。
高さ20〜40cm、総状花序に20〜30個の花をつけます。
花冠裂片の内側に縮れた長毛を密生。これはガガブタとそっくりです。
果実は蒴果、長柱花では数個の種子が出来ます(2019.6.2.)。
但しこの池は冬はミツガシワが枯れ、淋しい景色になります(2020.1.30.)。
それでもー8℃にもなるつくばの寒さにも耐え、早春芽生えます(2020.1.30.)。
3月下旬から開花が始まります(2022.4.3.)。
学名:Nymphoides peltata
分布:ユーラシア大陸の温帯地域、日本では本州以西
花期:5〜8月
日本産のアサザ属の中で唯一の黄色の花。
つくば植物園ではミツガシワの池のすぐ隣で咲きますが、接写出来ない距離で残念です( 2019.6.2.)。
和名は水深の浅いところに生えることからの「浅々菜」が転じたとか。
ジュンサイと同じく茎と新葉が食べられ、ハナジュンサイとも呼ばれるそうです。
花の直径:3〜4cm。
葉の長さ4〜12cm。葉の縁に荒い鋸歯があります。地下茎を伸ばして繁殖。
アサザの花も朝開いて夕には閉じる1日花です。
精一杯拡大しました。
5裂した花冠の周辺にはたくさんの細かい切れ込みがあります。
直土(ひたつち)に 足踏み貫き
夏草を 腰になづみ
いかなるや 人の子ゆゑぞ
通はすも我子(あご)
蜷(みな)の腸(わた) か黒き髪に
真木綿(まゆふ)もち あざさ結ひ垂れ
大和の 黄楊(つげ)の小櫛(をぐし)を
押へ刺す うらぐはし子 それぞ我が妻
巻13-3295 作者未詳
私には細かい言葉はわかりませんが、「夏草を腰に絡ませて恋人のところへ通う息子を按じる親の気持ち」や「黒髪に真木綿でアサザを飾り、貴重な『黄楊の小櫛』を差した美しい娘さんだから心配しなくて良いよと言う息子」が想像できて楽しいひとときになりました。