コシガヤホシクサ
越谷星草 ホシクサ科ホシクサ属の1年生の水草
学名:Eriocaulon heleocharioides
花期:7〜9月、 果期:9〜11月
「ホシクサ Eriocaulon cinereum 」は熱帯から亜熱帯に分布し、日本では本州から九州、沖縄に約40種 生育するそうです。
つくば植物園の中央広場に「コシガヤホシクサ」が大切に育てられている池があります。
2022年7月17日。浅い池に細い葉が束生していました。
植物園の解説:「ため池の岸辺、湿った河原に生育する
一年草。
湿地だけでなく水中でも生育し、水深に応じて花茎を伸長させる。」
水が澄んでいて メダカが周りを泳いでいました。
コシガヤホシクサは1938年に佐竹義輔氏が現在の
越谷市、元荒川の
砂州で発見。
しかしその後確認できなくなり絶滅したと考えられていました。
コシガヤホシクサは春から夏まではが水中生活、秋に花を付け種子を落とします。
砂沼は農業用灌漑池のため秋には水田への水供給が不要になり水位が下がるので種子が撒布され、翌春発芽できたのです。
しかし1994年の夏は
渇水のため砂沼は秋にも満水状態を保持、そのためコシガヤホシクサは種子ができず絶滅しました。
この時偶々コシガヤホシクサを研究されていた
東京農業大学 宮本太先生が種子を採取し育成中だったため、下妻自然観察クラブが引き継いで栽培されてきました。
さらに2008年からは
環境省生息域外
保全モデル事業として、つくば植物園で栽培中です。
2022年9月15日、私もつくば植物園でその花を見ることができました。
植物園の解説:
「地下茎は短く直立し、倒卵状で長さ10-15cm。
葉は束生し、線形で長さ7-15cm、幅3-4mm、先は鋭く尖る。
花茎は多数ついて高さ10-30cm。
頭花は水面上に出ていないと結実しない。」
花茎の天辺に白っぽい球状の頭花が付いています。
左下の頭花には総苞片が見えます。
花茎を齧ったのはオンブバッタ(右上)のしわざ ?
こちらの区画ではまだ咲き始めたばかりです。
頭花は灰白色で直径 6〜7mm。
頭花に星のような花が4つ見えます。
ぎりぎりまで拡大。ホシクサの花は3数生と。
白く輝いて見えるのは花弁3枚、萼片3枚。長さ約2mmの雄花のようです。
これはたくさんの雄花に取り囲まれて中心に雌花があるような?
コシガヤホシクサの雄花の萼は緑白色、雌花の萼は藍黒色で3個と。
『根茎があること、花茎に縦溝はあるが肋がないこと、雄花の萼は緑白色であるが、雌花の萼は藍黒色で葯が白色であること』などから新種とされたようです。
私はホシクサの仲間では
シラタマホシクサしか見たことがなく、解説がなかったらこの花も素通りしていたかもしれません。
下は2021年3月24日、つくば植物園のこの池で見たコシガヤホシクサの新芽です。
ここはきれいな水が湧いていますが、2008年からの砂沼の播種実験はウエットスーツ・ウエイト・ゴーグル・シュノーケルなどで完全装備しても濁った水を誤飲するなど危険な作業だったようです。
検索すると越谷市でも2011年から越谷市農業技術センターにおいてコシガヤホシクサの栽培が行われていました。
ミズアオイ
学名:Monochoria korsakowi
別名:ナギ(水葱)
分布:アジア東部
この池には
ミズアオイも栽培されていて同時に花を見ることが出来ました。
草丈20〜50cm、沈水葉は線形、抽水葉は心形。葉柄の先に光沢のある葉を付けます。
和名「ミズアオイ」は葉がアオイの葉に似ていることに由来。
9〜10月、花茎が伸びて青紫色の花を多数咲かせます(総状花序)。
花は3数生で花被片は6枚。
雄しべは6本。このうち5本は短く、葯は黄色。
1本は異形雄しべでやや長く、葯は濃い青紫色、この花粉で自家受粉するそうです。
それにしてもなぜこれだけ青い葯になったのでしょう?
花はこんなにたくさん咲くのに1日花。
オンブバッタはむしろ
ミズアオイが本命だったかもしれません。
万葉集には「醤酢に 蒜樢き合とて鯛願ふ 我にな見えぞ水葱の羹」と詠まれています。
「ひしおすにノビルをつきこんだ和え物と鯛を願っている私には見せてくれるな。水葱の吸い物なぞ!」
ミズアオイの若葉は食用にされたものの、あまり美味しくはなかったようです。
かつては水田雑草であったミズアオイは除草剤などにより減少していました。
地中に埋まったミズアオイの種子が発芽するためには、耕運などの撹乱によって種が地表近くに出てくることが必要ですが、津波がそれを担ったものと考えられました。
その後も「災害遺産ミズアオイ」を守る活動が続いているようです。