学名:Primula sieboldii
さくらそう品種展(4月15日〜23日)
つくば植物園では毎春サクラソウ展が開かれます。
桜草栽培の歴史や園芸品種の成立過程などは教育棟にパネル展示されました。
サクラソウの実物は教育棟の外で伝統に則って公開されます。
これは「桜草花壇」と言って江戸時代天保年間に考え出された陳列法だそうです。
それぞれの花が美しく引き立つように花色を順に繰り返して並べてあります。
(たしかに白色の間に紅紫色・濃桃色・淡桃色の繰り返しのようです。)
よく見れば花の色・模様・花形・花弁の形・花のつき方・花容(平咲き・抱え咲き・玉咲き・梅咲きなど)それぞれに異なります。
右側拡大:最上階は右から東雲(しののめ)、銀孔雀、銀覆輪、誰が袖。
左側拡大:最上階は右から誰が袖、菱袴、母の愛・関台紅。
続いて2段づつ6連の棚が並びます。
先ずは野生種。
長野県・広島県・埼玉県・東京都などの野生種が展示されていますが、核DNAの違いに基づく研究により、園芸品種は荒川流域を主とする関東周辺の野生集団と似ているそうです。
桜草の栽培:
江戸中期(1716〜1817)に江戸の地で武士層によって品種の改良が始まりました。
江戸後期には染井の植木屋 伊藤重兵衛などにより多くの園芸品種が完成し庶民にも拡大。
ついで「筑波大学コレクション」。
筑波大学つくば機能植物イノベーション研究センターで管理されています。
筑波大学の研究により「入野の都 いるののみやこ 紅色」と「喰裂紙 くいさきがみ 白色」との交配から多様の変異が現れ、多くの品種が生み出されたと推定されるそうです。
まだまだあります。
さらに筑波大学が里親さんたちに委託して維持していただいているコレクション。
今年は19日(水)の午後行きましたが、恒例の即売コーナーは閉店。
聞けば既に午前中に完売、また明朝入荷するとのこと、これもテレビドラマ「らんまん」の余波でしょうか。今までは午後でも少しは購入できて私も毎年1〜2株購入していました。
今春我が家の庭では野生種(ピンク)・初心・天が下・白兎の4種が咲きました。
このうちブログ未掲載の1種をここに載せます。
天が下(アメガシタ):星抱え咲きという咲き方のようです。
野生種のサクラソウ
つくば植物園の中には野生種のサクラソウが植栽されています(山地草原w9)。
ここは教育棟のパネルや「桜草花壇」の混雑が信じられないほど、静かで誰もいない空間でした。
学名:Primula japonica
分布:北海道・本州・四国
園内の道路に沿って造られた水辺の空間にはクリンソウが勢揃いしていました。
2019年以来最も株数が多く、豊かに育っています。
まだ花が咲き出したばかりで蕾も多く、花殻はありません。
手前にはヒメウツギが満開。
まだ15時前だというのに、他に立ち止まって見ている人はありません。
クリンソウの九輪は五重塔などの頂上部にある九つの輪装飾。花が花茎の周りに円状に付き、それが数段重なる姿から連想されたそうです(右から2株目の花)。
静かな水辺は苔蒸してクリンソウにとって至適空間だろうと思われます。
あとでつくば植物園のHPのスタッフのブログから、やはり今年クリンソウが200株も追植されたことを知りました。冬の間は育成中のクリンソウにハダニが付いてその駆除が大変だったようです。
ハダニから守られた葉はふくよかに育ってまだ次々と花を咲かせそうです。
他所で見たクリンソウは殆ど濃いピンク色でしたが、ここでは私の好きな淡い色も多く、今までで一番美しいクリンソウを見ることが出来ました。
江戸時代初期、既に「草花絵前集」に「色は白、紫、とび入などさまざまあり」との記載がああり栽培されたものの、サクラソウのような園芸品種は生まれなかったようです。