学名:Liriodendoron tulipifera
別名:チューリップノキ、ハンテンボク
花期:5月〜6月
分布:北アメリカ東部原産(日本には明治初期に渡来。)
つくば市は街路樹が美しい街です。
ユリノキ、トウカエデ、エンジュ、モミジバフウ、シラカシ、ケヤキ、イチョウ、トチノキ、マテバシイなどの大木が幹線道路の両側に聳えています。
私の家から一番近いのは西大通、ここにはユリノキが並んでいます。
しかし転居した2019年の秋、ここのユリノキは強剪定されて無残な姿でした。
昨年は葉が少しは出たものの、花は見られず終わりました。
つくば植物園にもユリノキはありますが、かなりの高木で花は見られません。
ところがどうでしょう!
今年は近くの西大通りのユリノキの高木には花がたくさん咲いたのです。
黄橙色の花が輝いています。
オレンジ色の大胆なかすり模様が入ったチューリップのような花。
花の直径は5〜6cm。どれも上を向いて開花。
黄緑色の萼片3枚が反り返っています。
運良く 一花だけ蕊を見ることが出来ました。
オレンジ色の部分は蜜標です。蜜が分泌され、かすかに芳香もあります。
拡大しました。
雄しべ20数本、花粉は雄しべの背面にある葯から出ています。
中央は雌しべが集合した雌蕊(しずい)です。
真下から写しました。萼片3枚の上に花弁が6枚。
落花寸前の花。左上には若々しい蕾が開こうとしています。
路上に落ちた花弁。雄しべも落ちています。
葉は大小様々、巾4cmから20cmを越えるものまでまちまちです。
葉が半纏(はんてん)に似ていることからハンテンボクとも言われます。
「ハンテン」とは半纏、江戸時代の庶民の上着。今でも防寒着やお祭りの法被(ハッピ)として使われています。確かに葉の形はよく似ています。(右:色紙を半纏の形に切り抜きました。)
灰褐色の幹には古木になるとさざ波模様が見られます。
空色の斑点部は地衣類。
花被片が落ちた後の若い果実。
よく見ると昨年の花の後かと思われる枯れた実が見つかりました。
昨年も少数ながら花が咲いていたのですね。
つくば植物園で見上げた 果実(2019年12月8日)。
高木のため花は葉に隠れて見えませんが、落葉後果実が現れます。
最も近い枝の拡大画像。
一昨年茨城県近代美術館で拾ったユリノキの果実と正月飾りのマツボックリ。
李朝の灯明皿に乗せて宝物のように飾ってありました。
「朝日百科 植物の世界」には ユリノキの果実について次のように書かれています。
「果実は集合果となるが、単一の果実は雌しべがそのままの形で大きくなって痩果(そうか)となり、裂開しない。花柱が翼となる翼果である。」
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思い切って宝物を分解しました。
中心の果軸の周りにモミジの種子のような翼付き種子がびっしり付いていました。
下方の種子は大きく、上にいくほど小さくなります。これで半分。
確かに雌しべの子房は種子に、花柱は翼になって風で運ばれるのですね。
↓ 今年路上で拾った古い果実。
最下部の種子だけが残っていましたがすぐバラバラになりました。
中央分離帯のきれいに刈り込まれたウバメガシの天辺からユリノキの葉が出ています。
強剪定の前にできた種子がここへ飛んだのでしょう。
未だにコロナ自粛が続く中、家の近くでユリノキの花が見られて幸いでした。
来年はもっと多くの木に、もっとたくさんの花が咲くことでしょう。
ユリノキの花や果実を間近で接写できますよう、楽しみにしています。