今年はやや遅れてきた つくば植物園の春も はや足早に去ろうとしています。
まずはブナの木の若芽が見たくて園内で一番高い落葉広葉樹林へ行ってみました。
ブナは高さ30mになる日本固有の植物で、森を語るときいつも登場する樹木です。
1993年ブナの原生林「白神山地」が世界自然遺産に登録されるとまた脚光を浴びました。
ブナは保水力に富むので林床には多様な動植物が育ち、縄文の昔から「森の恵み」を与えてきた代表的存在と言われます。
しかし私は若い頃登山の経験も少なく、ブナの木を観察したこともなく当地へ来ました。
幸いこの植物園にはブナの森がありますので今回はブナ入門です。
4月3日、ブナの若葉を見るためにこの植物園で一番高地の冷温帯落葉広葉樹林へ行きました。
ブナの幹はほぼ直立、樹皮は灰白色で割れ目は無くなめらか。
地衣類の着生により斑紋ができることもあります。
ブナは高木のため葉は観察困難ですが、この木は下部から出た枝が残してありました。
若い葉は細かい毛で覆われて初々しい。
褐色の托葉と白い毛に覆われて厳しい冬を越したのでしょう。
輝くような若葉。
白毛や托葉は葉の広がりと共に脱落し、殆ど無毛になります。
成葉は殆ど無毛。卵形から菱状卵形で互性、長さ4〜9cm。
薄くやや固め、縁は波状。
側脈は7〜11対(近縁のイヌブナでは10〜14対)。(2019.5.3)
葉の裏面。成葉では無毛(2019.5.3)。
一面の若葉(2021.4.17.)。
この頃花が開くはずですが、高所のため未確認です(雌雄同株)。
雄花序は新枝の下部や下部の葉腋に、雌花序は新枝の上部の葉腋につく。
秋には先の尖った実(殻斗)が4裂して2個の堅果が現れます。
紅葉(2020.11.26.)。
黄葉(2019.12.8.)。
ブナ と イヌブナ(下部中央)の落葉。(2019.11.27.)
筑波山の山頂部にもブナの林があります。しかし近年の温暖化の影響で衰退が危ぶまれ、茨城県では1990年より保全対策が講じられています。
2010年の調査ではブナ7,073個体、イヌブナ1,649個体が確認されました。
春のブナ林のアクセントはアカヤシオ。
アカヤシオは昨年も2021年春のつくば植物園(花木) に登場しました。
今年は花期がやや遅く色鮮やかで花数も多いようです(2022.4.3.)。
おや、こちらのアカヤシオの花の中には白い花が咲いています!
何でしょう?
何と左隣にあったのはオオカメノキ。
その枝がニューッと伸びてアカヤシオの花の間で白い花を咲かせたのです。
今年この株から咲いたのはこの花序一つのみ↓(右上の→の先)。
花には接近できず、iPhoneでは中央がピンボケでした(2021.4.3.)。
まわりは装飾花で5深裂、中央の小さい花が両性花。
2日後もう一度山登り、一眼レフで再撮影しましたがすでに花は退化中。
花の命は短くて.......です。
オオカメノキ
大亀の木 レンプクソウ科ガマズミ属の落葉小高木
別名:ムシカリ(語源 虫食われ?)
学名:Viburnum furcatum
分布:北海道・本州・四国・九州の山地のブナ帯。
オオカメノキもブナ林の早春の花。
4月3日、芽吹いたばかりの対生の葉はまだ冬の色で皺が深い。
4月5日、明るい褐色の若葉が開こうとしていました。
4月19日、もう鮮やかな緑色の若葉。
ほんとうに名の如く円い亀のような葉、長さ6〜20cmの円形〜広卵形になります。
花もすっかり様変わり。花弁はすでに落ち、子房が大きくなっているのは3個のみ。
果実は7〜10月頃赤く熟し、のち黒くなるそうです。
周りの尖った葉はアカヤシオの若芽(2022.4.19.)。
オオカメノキは冬も冬芽や葉痕が楽しめます(2019.1.16)。
冬籠りするうちに足腰衰えて植物園へ行けるかどうか不安になってきました。
今年はブナの若葉が見たい。でもブナ林まで登れるだろうか?
杖を頼りに、転ばぬように! 何とかクリアー。
さらにアカヤシオやオオカメノキに魅せられて再訪問。
つくば植物園はありがたきかな!