ササクレヒトヨタケ

サクレトヨタ

ささくれ一夜茸  ハラタケ科ササクレトヨタケ属のキノコの一種

学名:Coprinus comatus

 

6月5日12時頃庭隅の芝生の上に白い大きなキノコを発見しました。

f:id:yuusuget:20210608160652j:plain

 

大きさ:3x3.5x9cm 幼児を思わす可愛らしさ。

f:id:yuusuget:20210609011655j:plain

 

裾が少し開いて内側に襞が見えます。

f:id:yuusuget:20210609012954j:plain

 

6日8時 裾が膨らんで、表面のささくれが目立ってきました。

f:id:yuusuget:20210609012339j:plain

 

 内部は赤黒い。少々怪しい雰囲気です。

f:id:yuusuget:20210609013157j:plain

 

6日15時 釣鐘型になり、裾は黒っぽく変色。

これは腐敗ではなく自ら産生する酵素の働きによる自家消化だそうです。

f:id:yuusuget:20210609014415j:plain

 

6月6日18時 裾が開いて きのこ型になりました。

f:id:yuusuget:20210609015254j:plain

 

裾から黒い汁が滴り落ちています。

f:id:yuusuget:20210609015059j:plain

 

6月7日8時 見事に変身!

柄が長くなり円錐型の傘が開いて典型的なきのこ型。

f:id:yuusuget:20210610230145j:plain

 

裾は巻き上がって縁取りとなり、ささくれは小花のよう。

f:id:yuusuget:20210610232146j:plain

 

内側が見たい。iPhone を近付けて撮りました。

f:id:yuusuget:20210610075234j:plain

 

あ! しまった!

大きさを測ろうとして当てたメジャーの先が傘に触れて欠けてしまいました。

とりあえず落ちた切れ端を傘の上に仮置き。

f:id:yuusuget:20210610232714j:plain

 

深い襞。

f:id:yuusuget:20210610232742j:plain

 

傘の直径 約8cm 、高さ15cm。黒い汁が滴り落ちます。

f:id:yuusuget:20210610232832j:plain

 6月7日11時 傘は全開、ほぼ水平になって乾いてきました。

f:id:yuusuget:20210611013132j:plain

 

6月7日13時   周囲の黒い部分が一気下垂。

f:id:yuusuget:20210611013726j:plain

 

 6月7日17時 軸元に忍び寄るのは私が苦手のナメクジ!

f:id:yuusuget:20210612160920j:plain

 

6月8日8時 軸も2箇所で折れ曲がり、傘が下垂しました。

f:id:yuusuget:20210611014021j:plain

 

6月9日18時 干からびていくキノコを食べるナメクジ!

f:id:yuusuget:20210612094540j:plain

 

 6月10日8時 小さくなったキノコ、根本に穴が空いています。

f:id:yuusuget:20210610224017j:plain

 

 6月11日16時 ついに倒伏。軸の中央は大きく欠損。

f:id:yuusuget:20210612122856j:plain

 

 6月12日11時  殆ど黒く乾いていました。

周りにナメクジが残したのではと思われる粘液(?)が光っています。

ナメクジはキノコが好物のよう、その結果、胞子を運ぶこともあるようです。

f:id:yuusuget:20210612122224j:plain

 

これでお終いと立ち上がると芝生の上に白い影。

え? またキノコ? 

f:id:yuusuget:20210611171113j:plain

 

いえいえ、ナツツバキの落花でした!

f:id:yuusuget:20210611171301j:plain

 

追加: 6月7日 落下した キノコの傘の一部を木の葉に載せました。

f:id:yuusuget:20210612101428j:plain

 

右下に溜まった液は墨汁のよう。筆を浸して落書き1枚。

あとで検索するとすでにこの汁で絵を描いていらっしゃる方がありました。

f:id:yuusuget:20210609101259j:plain

 

このササクレトヨタケ、実はこけしのような「つぼみ」は食べられるのです。

ヨーロッパでは高級食材とか、すでに日本でも人工栽培が始まっていて「コプリーヌ」などの商品名で市販されていました。

 

 ささくれ一夜茸、一夜どころか1週間のお付き合いになりました。 

 

 

ユリノキの花

 ユリノキ

 百合の木 モクレンユリノキ属の落葉高木

学名:Liriodendoron  tulipifera

別名:チューリップノキ、ハンテンボク

花期:5月〜6月

分布:北アメリカ東部原産(日本には明治初期に渡来。)

 

つくば市は街路樹が美しい街です。

ユリノキ、トウカエデ、エンジュ、モミジバフウシラカシケヤキイチョウトチノキマテバシイなどの大木が幹線道路の両側に聳えています。

私の家から一番近いのは西大通、ここにはユリノキが並んでいます。

f:id:yuusuget:20210527013801j:plain

 

しかし転居した2019年の秋、ここのユリノキは強剪定されて無残な姿でした。

昨年は葉が少しは出たものの、花は見られず終わりました。

つくば植物園にもユリノキはありますが、かなりの高木で花は見られません。

 ところがどうでしょう!

今年は近くの西大通りのユリノキの高木には花がたくさん咲いたのです。

f:id:yuusuget:20210527014416j:plain

 

黄橙色の花が輝いています。

f:id:yuusuget:20210602090156j:plain


オレンジ色の大胆なかすり模様が入ったチューリップのような花。

花の直径は5〜6cm。どれも上を向いて開花。

黄緑色の萼片3枚が反り返っています。

f:id:yuusuget:20210526015917j:plain

 

運良く 一花だけ蕊を見ることが出来ました。

オレンジ色の部分は蜜標です。蜜が分泌され、かすかに芳香もあります。

f:id:yuusuget:20210526015310j:plain

 

拡大しました。

雄しべ20数本、花粉は雄しべの背面にある葯から出ています。

中央は雌しべが集合した雌蕊(しずい)です。

f:id:yuusuget:20210601171852j:plain

 

真下から写しました。萼片3枚の上に花弁が6枚。

f:id:yuusuget:20210526014339j:plain

 

落花寸前の花。左上には若々しい蕾が開こうとしています。 

f:id:yuusuget:20210526015601j:plain

 

路上に落ちた花弁。雄しべも落ちています。 

f:id:yuusuget:20210603233835j:plain

 

葉は大小様々、巾4cmから20cmを越えるものまでまちまちです。

葉が半纏(はんてん)に似ていることからハンテンボクとも言われます。

「ハンテン」とは半纏、江戸時代の庶民の上着。今でも防寒着やお祭りの法被(ハッピ)として使われています。確かに葉の形はよく似ています。(右:色紙を半纏の形に切り抜きました。)

f:id:yuusuget:20210603115353j:plain f:id:yuusuget:20210603115446j:plain

 

 灰褐色の幹には古木になるとさざ波模様が見られます。

空色の斑点部は地衣類。

f:id:yuusuget:20210527002052j:plain

 

花被片が落ちた後の若い果実。

f:id:yuusuget:20210603174249j:plain

 

 よく見ると昨年の花の後かと思われる枯れた実が見つかりました。

昨年も少数ながら花が咲いていたのですね。

f:id:yuusuget:20210603171859j:plain

 

つくば植物園で見上げた 果実(2019年12月8日)。

高木のため花は葉に隠れて見えませんが、落葉後果実が現れます。

f:id:yuusuget:20210602092554j:plain

 

最も近い枝の拡大画像。

f:id:yuusuget:20210602011839j:plain

 

一昨年茨城県近代美術館で拾ったユリノキの果実と正月飾りのマツボックリ。

李朝の灯明皿に乗せて宝物のように飾ってありました。

f:id:yuusuget:20210531232903j:plain

 

「朝日百科 植物の世界」には ユリノキの果実について次のように書かれています。

「果実は集合果となるが、単一の果実は雌しべがそのままの形で大きくなって痩果(そうか)となり、裂開しない。花柱が翼となる翼果である。」

??????

思い切って宝物を分解しました。

中心の果軸の周りにモミジの種子のような翼付き種子がびっしり付いていました。

下方の種子は大きく、上にいくほど小さくなります。これで半分。

確かに雌しべの子房は種子に、花柱は翼になって風で運ばれるのですね。

f:id:yuusuget:20210604093804j:plain

         ↓ 今年路上で拾った古い果実。

      最下部の種子だけが残っていましたがすぐバラバラになりました。

f:id:yuusuget:20210604095508j:plain

 

中央分離帯のきれいに刈り込まれたウバメガシの天辺からユリノキの葉が出ています。

強剪定の前にできた種子がここへ飛んだのでしょう。

f:id:yuusuget:20210603170829j:plain

 

未だにコロナ自粛が続く中、家の近くでユリノキの花が見られて幸いでした。

来年はもっと多くの木に、もっとたくさんの花が咲くことでしょう。

ユリノキの花や果実を間近で接写できますよう、楽しみにしています。

 

初夏の庭 2021

何と月日が経つのが早いことか、はや3年目の梅雨の到来です。

今日は今年の前庭の記録を残すことにしました。

これは5月20日の前庭です。もぐらに荒らされた芝生が生えそろってきました。

f:id:yuusuget:20210521003533j:plain


まずは遅ればせながら今年の春の庭を振り返りましょう。

特筆すべきは昨年の庭の中心だったイブキジャコウソウ の衰退です。

昨年の今頃、庭中央のツバキの周りにはイブキジャコウソウのカーペットでした。(2020.5.16.)

f:id:yuusuget:20210519001018j:plain

 

しかしイブキジャコウソウは昨秋から徐々に枯れていったのです(↓4月1日)。

特にツバキの北側(手前)は発芽が少なく、株ごと枯れました。

再起不能と考えて3月から新たにカワラナデシコ、フッチンシア(白)、ツルハナシノブ(青)などの苗を植え込みました。

f:id:yuusuget:20210519000429j:plain

 

5月18日 

ツバキの南側には少しまとまったイブキジャコウソウの開花が見られました。

こちらにも余地にアネモネ シルベストリア、キキョウなど追加。

f:id:yuusuget:20210519104241j:plain

 

今では 芝生側から見ればイブキジャコウソウの欠損は殆どわかりません。

前に植えたカワラナデシコゲラニウム、メリテス、ツボサンゴなどで隠れます。

f:id:yuusuget:20210520232623j:plain

 

タイワンツバキの根元に植えた白花イブキジャコウソウは意外に元気です。

紅い葉はタイワンツバキの落葉。

今後はイブキジャコウソウを踏石の間などに少しづつ植えてみようと思っています。

f:id:yuusuget:20210519111409j:plain

 

 今まで下草をビオラトレニアなどの1年草で繋いできましたが、少しづつ多年草に置き換えていきたいと思っています。

愛知では耐暑性が問題でしたが、こちらでは耐寒性が重要です。

それに合格したゲラニウムフウロソウ)について調べたことを記録します。

 

ゲラニウム サンギネウム ストリアタム

 アケボノフウロ(曙風露)

  フウロソウ科の半常緑多年草(園芸種) 

  学名:Geranium sanguineum striatun

      コーカサスを中心に自生する原種をもとにした園芸品種

f:id:yuusuget:20210521010246j:plain

 

フウロソウ科 Geraniaceae には次の3属があります。

1)Erodium  オランダフウロ属 ... オランダフウロなど

 2)Geranium  フウロソウ属...ゲンノショウコ・ヒメフウロ・アケボノフウロ など  

 3)Pelargonium テンジクアオイ属...ゼラニウム・ペラルゴニウム など

 

アケボノフウロは暑さ寒さにも負けず、葉の緑も美しい多年草(半常緑)です。

f:id:yuusuget:20210519182519j:plain

 

淡いピンクの花弁に赤紫色の筋が入ります。

透けて見えるような細い血管を連想して命名されたようです。

f:id:yuusuget:20210520161501j:plain

 

昨夏、アケボノフウロがこの土地に合うことがわかり、ゲラニウムの他種を探しました。

すでに「在庫なし」が多かったのですが以下4種を追加植栽しました。

いずれもマイナス8℃に耐え今春花が見られました。


ゲラニウム サンギネウム アルブム

   Geranium sanguineum  album

 純白の清々しい花です。

f:id:yuusuget:20210520161413j:plain

 

ピンクのストリアタムの単なる色違いではなく、花弁も葉もややスリムです。

f:id:yuusuget:20210521010725j:plain

 

ゲラニウム サンギネウム マックスフライ

   Geranium sanguineum L.'Max Frei'

日当たりが良くスギゴケが育たないところに植えましたが、よく育ちました。

個人的には花の色が少々紅過ぎましたが、ニホンサクラソウクリンソウと同じくらいです。左は花後のタンチョウソウ 。

f:id:yuusuget:20210520173024j:plain

 

 冬季には紅葉が見られました。半常緑とはこういうことなのですね。

f:id:yuusuget:20210521011135j:plain

 

ゲラニウム ビオコボ

 クロアチア原産のハイブリッド系園芸品種 半常緑多年草

これだけは家の北側、北風強く、西日が当たるという劣悪環境に試しに植えたのですが、厳冬にもよく耐え、珍しい花を咲かせてくれました。

f:id:yuusuget:20210519020007j:plain

 

雄性先熟。右が雄性期、黄色い花粉が出ています。

左は雌性期、雌しべが伸び、柱頭が開いています。

f:id:yuusuget:20210520180708j:plain

 

 

ゲラニウム ミセスケンドールクラーク

淡青色の大きな花が毎日次々と開花、丈も高くなります(約40cm)。

花弁は5枚、萼片も5枚。

f:id:yuusuget:20210519015313j:plain

 

2株植えましたが、1株は日陰になってほとんど育っていません。

 雄しべは10本。

f:id:yuusuget:20210520182229j:plain

 

アナベルが咲くと負けるでしょうか。

f:id:yuusuget:20210521012417j:plain

 

近々 ゲラニウム’ジョンソンズブルー’の苗が到着する予定です。


もう一つ、追加です。

今年の初めに撤去したウキツリボク(チロリアンランプ)の跡に衝動買いしたハンショウヅルを植えました。

f:id:yuusuget:20210521014821j:plain

この下には山野草を少々植える予定です。

 

 





2021年春のつくば植物園(花木)

 

ミケリア・プラティペタラ 

http://www.tbg.kahaku.go.jp › illustrated › result › nam...
 モクレンオガタマノキ属の常緑高木
 学名: Michelia platypetala 
 分布:中国の中〜南部
 
 2月25日、今年は温室の間にある中庭のタイワンツバキに花が見られません。

代わりにその奥で「ミケリア・プラティペタラ 」が開花中でした。

 しかし知らない人が多いのでしょう、観客は私一人。

f:id:yuusuget:20210504013329j:plain

 
褐色の芽鱗が剥がれて白い花が現れます。
すでに1月27日から芽鱗が剥がれ始めていて開花を待っていたのです。

f:id:yuusuget:20210504014906j:plain

 
純白の花被片が開くと芳香が漂います。
次々と開花。落葉のモクレンに比べ、葉との共演が見事です。
また常緑のタイサンボクより花も葉もソフトな印象です。
楕円形の厚い葉は互性、光沢があります。

f:id:yuusuget:20210504014653j:plain

 
花の形もモクレンより開放的で花の向きもまちまち。コブシのようには垂れません。

花被片は9枚、うち外側の3枚は萼片だそうです。

f:id:yuusuget:20210504014945j:plain

 

3月13日、満開です。
端正なハクモクレンと比べると咲き乱れているという印象です。

f:id:yuusuget:20210504015124j:plain

 

サーモンピンクの蕊が見えています。

花の香りに酔って蕊の観察を忘れました。また来年。

f:id:yuusuget:20210504023214j:plain

 こちらの私の庭には同じくオガタマノキ属のミヤマガンショウ(深山含笑 Michelia maudiae)を植えています。いつかまた並べて報告したいと思っています。
 
 

シャクナゲ  ’太陽’

 学 名. Rhododendron 'Taiyo'.

昨年花数が少なかった ’太陽’ 、今年は厳冬にも関わらず豪華な開花でした(2021.4.16.)

派手な大木ですが、周りはしっかり緑で囲まれています。

f:id:yuusuget:20210503110505j:plain

 

花はブーケが密集したかのように束生。

白い雌しべの花柱が雄しべを越えて伸びて立ち上がり、先端に赤い柱頭が艶やかです。

f:id:yuusuget:20210503172838j:plain

 

ズ ミ

 酸実、桷   バラ科リンゴ属の落葉小高木

 学名:Malus toringo

 分布:北海道・本州・四国・九州

この白い花は何でしょう? 初めて見る花でした。

f:id:yuusuget:20210504181221j:plain

 

こちらはかなり大きい。

名札はズミ。ズミという名は聞いたことがあります。

f:id:yuusuget:20210504181251j:plain

 

素朴な白い花です。小さい赤い実がなるそうです。

f:id:yuusuget:20210504181321j:plain

 

面白い立札が立っていました。新しいもののようです。

それにしてもどうしてkoringo ではなく toringo なんでしょう?

f:id:yuusuget:20210504181802j:plain


アカヤシオ
 赤八汐 ツツジツツジ属の落葉低木

 学名:Rhododendron pentaphyllum

 分布: 本州(福島県以西)・四国・九州

近畿地方以西に分布するアケボノツツジ(曙躑躅)の変種

 

3月26日 静かなブナやイヌブナの林の中に優しいピンクの花が拡がっていました。

f:id:yuusuget:20210504220446j:plain

 
 何とも素朴な花!

f:id:yuusuget:20210504232340j:plain


雄しべは10本、うち上側のものは花糸が短いと。

葉は花の後に5枚輪生。

f:id:yuusuget:20210505160332j:plain

 

シロヤシオ

白八汐 ツツジツツジ属の落葉小高木

学名:Rhododendron quinquefolium

分布:本州・四国のブナ帯に生育

 

4月17日 ブナの林に白いツツジが咲いていました。これがシロヤシオ

花と同時に輪生する5枚の葉が出るので、ゴヨウツツジとも言われます。

f:id:yuusuget:20210505000303j:plain

 

拡大して見るとこれも雄しべは10本、うち上側のものは花糸が短いようです。

よくみると葉には赤褐色の縁取りがあります。

f:id:yuusuget:20210505162715j:plain

 

3回目の緊急事態宣言が出てもまだ新型コロナウイルス感染症の勢いは止まりそうにありません。茨城県は比較的少ないとはいえ、毎日数十人の発症があります。

植物園も休日は来園者が多いので行かないことにしています。

今日は小さな菜園にナス3本、キュウリ2本を植えました。共に接木苗です。

 

クマガイソウなど

ときは平安時代末期。

一谷の合戦で源氏の武将 熊谷直実が平家の若武者 平敦盛を追う。

唐突ですが今日の「クマガイソウ」はこの熊谷直実の母衣(ほろ)に由来する白いラン科植物の和名です。そしてまだ見ぬ「アツモリソウ」は平敦盛に由来する赤い花。

母衣は武士が兜や鎧の背につけた大きな絹布で、「一の谷合戦図屏風」には風を受けて大きく膨らんだ熊谷直実赤い母衣が描かれています(Wikipedia 母衣)。

 クマガイソウ・アツモリソウは共に 絶滅危惧Ⅱ類。

 

クマガイソウ

  熊谷草 ラン科アツモリソウ属に分類される多年草

  学名:Cypripedium japonicum Thunb.

    高さ:20〜40cm

 クマガイソウは写真でしか見たことがなく、この植物園には奥の方に群落があることを知って興味津々でした。

ところが初めに気付いた2019年はすでに花期を終えていました。

翌2020年はコロナ禍で休園。

4月9日、今年こそはと期待して行きましたが、まだ蕾でした。

f:id:yuusuget:20210420000016j:plain

 

でも辛うじて咲き始めを撮ることができました。

f:id:yuusuget:20210420221933j:plain

 

ほぼ開花した状態。満開はもうあと数日後でしょうか、また出直しましょう。

f:id:yuusuget:20210420001210j:plain

 

4月17日 9:40

昼なお暗き常緑広葉樹林を進むと、次は誰もいない針葉樹林帯。

本道から少し小径を入ったところに秘密の花園がありました。

一区画すべてクマガイソウです!

観客は私一人。皆こちらを向いているように見えます。

f:id:yuusuget:20210420174826j:plain

 

 扇形のひだのある大きな2枚の葉の間から1本の花茎が伸び、提灯のような花が垂れ下がっています。

f:id:yuusuget:20210420002202j:plain

 

花の大きさは8cmくらい。

ラン科の花には3枚の萼片と2枚の側花弁、1枚の唇弁があるそうです。

クマガイソウの花を側面あるいは後方から見ると、2枚の萼片がよく見えます。

後の萼片は2枚の側萼片が合着いているのだそうです(萼片は合計3枚)。

その下に萼片とよく似た側花弁が2枚、大きな袋状の唇弁と合わせて花弁も3枚です。

f:id:yuusuget:20210421230445j:plain


唇弁は大きな袋状。これが風を受けてふくらんだ母衣(ほろ)に見たてられたのですね。

 花の中央に蕊柱があり、その左右に黄色い葯が覗いています。

この花には蜜がなく、中央の穴から入った昆虫はさまよった挙句小さい穴に誘導され、葯についた花粉を付けて外へ出る構造だそうです。 

f:id:yuusuget:20210421224818j:plain

 

側花弁は黄緑色、唇弁は白色調ですが、共に紫紅色斑点があります。この花では左唇弁の紫紅色班が目立っています。 

f:id:yuusuget:20210420003614j:plain

 

風はらむ熊谷草の花の母衣(ほろ)  吉田朔夏

熊谷草を見せよと仰せありしとか   高浜虚子

 春行くと敦盛草の花の幌(ほろ)   吉田冬葉

 

チゴユリ

  稚児百合  ユリ目イヌサフランチゴユリ属多年草(←スズラン科、←ユリ科

 学名:Disporum smilacinum 

  分布:日本・朝鮮・中国

4月9日 花は皆、俯いていました。

f:id:yuusuget:20210425015831j:plain

 

4月17日、再訪。

驚きました。花が上を向いているのです。こんなチゴユリは初めて見ました。

f:id:yuusuget:20210425011246j:plain

 

花被片は6枚、雄しべ6本、雄しべの長さは花被片の長さのほぼ半分。

しかし既に受粉を終え、花被片も透けて見えます。

来年はもう少し早めの花が見られますように。

f:id:yuusuget:20210425012253j:plain

 

 

トガクシソウ

 戸隠草 メギ科トガクシソウ属の多年草(1属1種の日本固有種)

 学名:Ranzania japonica

    別名:トガクシショウマ(戸隠升麻)

 分布:本州北部から中部(積雪のある深山の北斜面)

            準絶滅危惧(NT)

チゴユリの近くに植えられていたトガクシソウに花が咲いていました。

残念ながら遠くからしか撮れません。

学名は江戸中期の本草家・小野蘭山に、和名は初めて発見された戸隠山(長野県)に由来しています。

f:id:yuusuget:20210425100715j:plain

 

よく見るともう花が咲いているようです。

f:id:yuusuget:20210425100958j:plain

 

近寄れないので腕をできるだけ伸ばして接写。

f:id:yuusuget:20210425101107j:plain

 

精一杯 拡大しました。

来年見られるかどうかわからないので記録しておきます。

花は3数性で、萼片9枚、そのうち3枚は開花時には脱落。

薄紫色の花弁状に見えるのは残りの6枚の萼片だそうです。

f:id:yuusuget:20210425101156j:plain


この花は日本人によって初めて学名を与えられた花としても有名です。

1883年伊藤篤太郎(東京大学教授伊藤圭介の孫)はこの標本をロシアのマキシモヴィッチに送り、1886年トガクシソウとして学術誌に発表されました。

しかしこの命名に起因して伊藤は東京大学初代植物学教室教授矢田部良吉から教室出入り禁止処分を受けたため、この花は「破門草」ともいわれたそうです。

 

 

 

 

 

 

春の庭 2021

毎年春は駆け足で通り抜けてしまいますが、今年は新記録誕生かと思われるスピード、のろまな高齢者は付いていけません。

咋日は朝からたっぷりの雨、庭にも出られず、やっと写真の整理をしました。

2月「厳冬の記録」に悲惨な状況を記した東花壇も今はもう花で覆われています。

下草はビオラと復帰したオレガノ カントリークリーム。

f:id:yuusuget:20210414102429j:plain

 

植え込みの低木は常緑のソヨゴ・キンマサキと下記の花木。

トキワマンサク

 マンサク科の常緑小高木

f:id:yuusuget:20210414103649j:plain

 

カメリア・エリナ

 ツバキ科ツバキ属の常緑低木(園芸種)

f:id:yuusuget:20210414103101j:plain

 

ドウダンツツジ

 ツツジ科の落葉低木

f:id:yuusuget:20210414104434j:plain

  

東南のボーダー花壇にもトキワマンサク・ミヤマウグイスカグラ・ジューンベリー・シロヤマブキが咲き揃いました。

昨年枯れたオオチョウジガマズミの後にセアノサス’マリー・サイモン’を植えましたが、これも今年の寒さには耐えられませんでした。

ここは4m道路に面していますからいつもオープンガーデン、厳冬期は寂しい空間でしたがやっと明るくなりました。

f:id:yuusuget:20210414110848j:plain

 

家の北側もセミ・オープンガーデン。

ここのカメリア・エリナも満開、中央はクロモジの若葉です。

f:id:yuusuget:20210414113950j:plain

 

北風が吹き荒れたはずですが、今年のシロヤマブキは北側の方が花が多い。

f:id:yuusuget:20210414114441j:plain

 

さて南庭の右側です。

昨年は春が深くなるにつれ、ビオラの色が濃色になりすぎた感じがして、今年はできるだけ色を抑えました。ビオラは殆ど安くて丈夫な単色です。

また昨秋はスーパートレニアやベゴニヤが育ちすぎ、ビオラを植えるのが遅れました。

続く寒波でビオラの生育が悪かったのですが、枯れることはなくほどほどに咲いています。

その後ろはクリスマスローズシャクナゲ・ドウダンなど。

f:id:yuusuget:20210414161538j:plain

 

ビオラの間には今年もハナニラが出てきました。

f:id:yuusuget:20210415014659j:plain

 

南庭の左はつくばいの庭。日当たりが良すぎて苔の維持がむつかしい。

左のプランターのイヌシデの若葉が新鮮です。

f:id:yuusuget:20210415005505j:plain

 

中央のアセビはつくばいの水で過湿になったのか一度枯れかけました。細かい剪定やつくばいの水量調節によってなんとか生き延びたようです。

f:id:yuusuget:20210415103458j:plain

 

左奥は愛知から持ってきた園芸種のニホンサクラソウ「白兎」。

昨秋プランターから出して地植えにしましたが、−8度に耐え立派な花を咲かせました。

f:id:yuusuget:20210415012225j:plain

 

右は Iさんからいただいた原種のニホンサクラソウです。

その前で静かに咲いているのはヒメリュウキンカ

左の元気な緑はユウスゲです。

f:id:yuusuget:20210415013201j:plain

 

和洋混在、タンチョウソウ とビオラ

タンチョウソウはここで3度目の春を迎えました。

f:id:yuusuget:20210415013453j:plain

 

南庭は木々の葉がより広がって花より緑がメインの庭になりました。

居間からいつも見る庭はこの方が目が休まります。

今後は塀の後ろの空間に山野草コーナーを作る予定です。

 

 

 

つくば植物園のサクラから

今年の春は超特急!

厳冬が開けると例年の桜前線はどこへやら、東も西も無視して我先にと開花したようです。

サクラは前のブログに「曽川堤の桜」  を載せましたが、木曽川では見られなかったサクラがつくば植物園ではいろいろ見られます。

しかし広い園内、2019年はどこに咲いているか探せないうちに花は散ってしまいました。

さらに昨春は休園、今回は2019年分も併せて画像を並べます。

しかし、いざ書こうとするとサクラについての知識が全く足りないことが判明。

調べつつ、わかったことを備忘録として載せます。

 

カワヅザクラ河津桜

 オオシマザクラカンヒザクラの自然交雑種。

最近各地で咲いていますが、1974年カワヅザクラ命名された新しい品種です。

(私の参考書「朝日百科 植物の世界 1997年発行」には掲載されていません。)

つくば植物園のサクラは正門前のこのカワヅザクラから始まります(2021.2.25.)。

f:id:yuusuget:20210402104730j:plain

 

サクラとしてはやや濃いピンクで遠くからは紅梅?と思うほどです。

f:id:yuusuget:20210402105204j:plain

 

花期が2月頃と早いため花粉を運ぶ昆虫は期待できそうにありませんが、早咲き品種として需要が多く、接木などで増殖されているようです。樹高 〜10m。

f:id:yuusuget:20210403140908j:plain

 

オオシマザクラ(大島桜)

 バラ科サクラ属の落葉高木 日本固有種 

  学名:Cerasus speciosa

 分布:房総・伊豆諸島

今年一番見たかったサクラです。

大型の白い花が葉の展開と同時に咲くのが特徴。

 白い花は直径4cmほどになり、萼筒もほっそりして気品があります(2021.3.31.)。

f:id:yuusuget:20210402145741j:plain

 

大らかで美しい花。よく見ると花糸の色がいろいろ。

f:id:yuusuget:20210403022124j:plain

 

葉柄や花柄には毛がなく、葉柄上部に赤い蜜腺が見えます。

葉も大きく、桜餅を包むのに用いられています。

その芳香は生の葉にはなく、塩蔵中に生ずるクマリンの配糖体に由来するそうです。

f:id:yuusuget:20210403000645j:plain

 

樹高20mを超える大木になり、樹形は傘状。

f:id:yuusuget:20210404110429j:plain

 

大木は花が見難いのですが、池畔では枝が低く伸びて見易い。

f:id:yuusuget:20210402150156j:plain

 

樹皮は紫褐色で光沢があり、短い横筋が見えます。

f:id:yuusuget:20210404105054j:plain

オオシマザクラを母とする栽培品種はサトザクラ群といわれ、カンザン、フゲンゾウなど数多の品種があります。
 

ソメイヨシノ染井吉野

 学名:Cerasus yedoensis

ソメイヨシノは江戸時代後期に染井村(江戸駒込)で誕生し、以後接木・挿木により全国に広まったといわれています。

1916年米国の植物学者ウィルソンはソメイヨシノエドヒガン(♀)とオオシマザクラ(♂)の雑種であろうとする説を発表、後に国立遺伝学研究所の故 竹中要博士はこれら両種の交雑実験を行い、ソメイヨシノとほぼ同じものをつくることに成功されたそうです。

1995年遺伝子研究の結果、ソメイヨシノエドヒガンとオオシマザクラの雑種が交雑してできた単一の樹を始源とする栽培品種のクローンと判明。

つくば植物園も入り口近くにソメイヨシノが植えられていて、駐車場からも見えます。

f:id:yuusuget:20210404115608j:plain

 

蕾では母であるエドヒガンの特徴「壺型の萼筒」の名残りがよくわかります。

f:id:yuusuget:20210404120040j:plain

ソメイヨシノオオシマザクラが母ではなく父なので、サトザクラには含まれません。)

 

アマギヨシノザクラ(天城吉野桜

オオシマザクラ(♀)とエドヒガン(♂)の交配種。

このアマギヨシノザクラも「ソメイヨシノ系の園芸品種」です。

大木だったはずですが、上部は欠損し痛々しく咲いていました(2019.4.5.撮影)。

f:id:yuusuget:20210402105658j:plain

 

咲きはじめはソメイヨシノより白っぽく、、花と同時に若葉が開いています(20190405)。

f:id:yuusuget:20210403110136j:plain

 

 咲き進むとおしべが 赤くなるのはオオシマザクラと同じ。

f:id:yuusuget:20210403155018j:plain

 

ウスゲヤマザクラ(薄毛山桜)

 バラ科サクラ属の落葉高木 

 分布:本州(宮城・新潟以南)、韓国(済州島

花と葉が同時に開いて賑やかでした。

ヤマザクラかと思いましたが、標示はウスゲヤマザクラ(2019.4.14.)。

f:id:yuusuget:20210404161544j:plain

 

葉柄や小花柄にうっすら毛があるようです(次回接写予定)。

f:id:yuusuget:20210404162246j:plain

 

マメザクラ(豆桜)

  学名:Cerasus incisa    日本固有種 

目立たないところにひっそりと咲いているサクラを見つけました。

花が遠くて小さく、接写できないのが残念です(2021.3.25.)。

f:id:yuusuget:20210403161409j:plain


樹高も低く寒さにはたいへん強く、富士山付近に多いそうです。

比較的早咲きで葉とほぼ同時に開花。

f:id:yuusuget:20210403161432j:plain

「サクラ日本固有種」

 以下の11種(もしくはカンヒガンザクラを除く10種)

ヤマザクラ・オオヤマザクラ・カスミザクラ・オオシマザクラエドヒガン・チョウジザクラ・マメザクラ・タカネザクラ・ミヤマザクラ・クマノザクラ・カンヒガンザクラ

 

サクラをタイミングよく撮るのはなかなかたいへんです。

残りはまた次の機会に。