カツラ・ニッケイ・シナモン

秋の気配に誘われてやはり植物園に行きたくなりました。

まだマスク着用と入館前の体温測定は継続、研修展示館などは閉館していますが、植物たちは泰然と秋を迎えていました。

しかし自粛の影響で歩行能力が落ちたのか以前よりさらに足運びが悪い。

広い園内、杖をつきながら少しづつ見ることにします。

 

カツラ

 桂   カツラ科カツラ属の落葉高木

学名:Cercidiphyllum japonicum

分布:日本、中国

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案内板によると漢字の「桂」はニッケイのようなクスノキ属やモクセイ属の樹木をさし、平安時代にはニッケイメカズラ、カツラをオカズラとよんでいたことから「 桂」の字が当てられたと。和名も「香出(かづ)」に由来するといわれます。

 

昨年11月21日、私はこの植物園でカツラの甘い香りを初体験しました。

   「つくば植物園の紅葉 2019

今年もあの香りをもう一度と思い、園内3箇所のカツラの木を巡りました。

10月18日 、池の東側、岩礫地のカツラ。

 葉はまだ黄変しきらず、落葉はわずか、香りもこれがそうかな?という程度。

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雨後の10月24日、中央広場のカツラ。半ば落葉しています。 

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しかし落ち葉の清掃が行き届いているせいか、香りは微かにという程度でした。

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池に落ちたカツラの葉。

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10月27日、残るは一番奥のブナやイヌブナの林にあるカツラです。

近づくにつれ昨年のキャラメルの匂いがよみがえってきました。

あ〜 この香りと、深呼吸。でもまだ昨年ほどには感じられません。

この香りはカツラの葉に含まれるマルトールという香気成分によるそうです。

マルトールは老化して乾燥した葉の組織が壊れて放出されると考えられています。

但し昨年は11月25日。葉は黄色か褐色で大半は落葉していました。

今年の香りのピークはもう少し後のようです。

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真っ直ぐな幹は柔らかく、家具・仏像・碁盤・将棋盤などにも利用されてきました。

カツラは 雌雄異株。花や実の観察はまた来年の課題にしましょう。

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ニッケイ

 肉桂 クスノキ科ニッケイ属の常緑高木

  学名:Cinnamomum sieboldii

 分布:徳之島・沖縄島・久米島、中国南部、インドシナ半島

中央広場にどっしり構えた大木があります。これがニッケイです。

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樹下のベンチ。周りに落ち葉が積もります。

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根や幹の皮に芳香と香味があり、お菓子や薬(健胃剤や発汗剤)などに利用されてきました。

ニッキ飴、八ツ橋、肉桂餅など現在も造られています。

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 葉は長さ10cmくらいの被針形、革質で光沢があります。

3本の葉脈が美しい。

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落ち葉を拾って嗅いで見ましたが香りは感じられませんでした。

しかし枯れ葉を砕くと確かにニッキの香りがしました。 

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見上げると1cmくらいの緑色の果実が飛び出していました。

これはもう少し熟すと黒くなるようです。 

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セイロンニッケイ    (シナモン)

      錫蘭肉桂   クスノキ科の常緑小高木  

 学名:Cinnamomum verum ( C. zeylanicum )

   原産:インド、マレーシア、セイロン島

 

つくば植物園ではセイロンニッケイも熱帯資源植物温室にありました。

シナモンはこの若い枝の樹皮を乾燥させたものだそうです。

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すでに 温室の高さを超え、剪定されているようです。

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葉は対生、ニッケイより大きく、狭卵形で光沢があります。

縦に3本の葉脈が入り、観葉植物としても美しい。

残念ながら今は花も実も見られませんでした。

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シナモンはコショウ、グローブと並ぶ三大スパイスの一つとされ、熱帯各地で 栽培されています。

樹皮のまま細長く巻いたものはシナモンスティックとして流通、また粉末状にしたものはシナモンパウダーとしてシリアル・パン・ケーキや料理、コーヒーや紅茶などに使われています。