初秋のつくば植物園(2)

 

コシガヤホシクサ

越谷星草 ホシクサ科ホシクサ属の1年生の水草

学名:Eriocaulon heleocharioides
花期:7〜9月、 果期:9〜11月
自然分布:埼玉県越谷市茨城県下妻市(1994年絶滅)
 
「ホシクサ Eriocaulon cinereum 」は熱帯から亜熱帯に分布し、日本では本州から九州、沖縄に約40種 生育するそうです。
 
つくば植物園の中央広場に「コシガヤホシクサ」が大切に育てられている池があります。

2022年7月17日。浅い池に細い葉が束生していました。

 
植物園の解説:「ため池の岸辺、湿った河原に生育する一年草
湿地だけでなく水中でも生育し、水深に応じて花茎を伸長させる。」

水が澄んでいて メダカが周りを泳いでいました。

 
コシガヤホシクサは1938年に佐竹義輔氏が現在の越谷市、元荒川の砂州で発見。
しかしその後確認できなくなり絶滅したと考えられていました。
ところが1975年茨城県下妻市砂沼で再発見。
 
コシガヤホシクサは春から夏まではが水中生活、秋に花を付け種子を落とします。
砂沼は農業用灌漑池のため秋には水田への水供給が不要になり水位が下がるので種子が撒布され、翌春発芽できたのです。
しかし1994年の夏は渇水のため砂沼は秋にも満水状態を保持、そのためコシガヤホシクサは種子ができず絶滅しました。
 
この時偶々コシガヤホシクサを研究されていた東京農業大学 宮本太先生が種子を採取し育成中だったため、下妻自然観察クラブが引き継いで栽培されてきました。
さらに2008年からは環境省生息域外保全モデル事業として、つくば植物園で栽培中です。
 
2022年9月15日、私もつくば植物園でその花を見ることができました。

 

植物園の解説:

「地下茎は短く直立し、倒卵状で長さ10-15cm。

葉は束生し、線形で長さ7-15cm、幅3-4mm、先は鋭く尖る。

花茎は多数ついて高さ10-30cm。

頭花は水面上に出ていないと結実しない。」

 

花茎の天辺に白っぽい球状の頭花が付いています。

 

左下の頭花には総苞片が見えます。

花茎を齧ったのはオンブバッタ(右上)のしわざ ?

 

 こちらの区画ではまだ咲き始めたばかりです。

 

 頭花は灰白色で直径 6〜7mm。

 

頭花に星のような花が4つ見えます。

 

ぎりぎりまで拡大。ホシクサの花は3数生と。

白く輝いて見えるのは花弁3枚、萼片3枚。長さ約2mmの雄花のようです。

 

これはたくさんの雄花に取り囲まれて中心に雌花があるような?

コシガヤホシクサの雄花の萼は緑白色、雌花の萼は藍黒色で3個と。
 
『根茎があること、花茎に縦溝はあるが肋がないこと、雄花の萼は緑白色であるが、雌花の萼は藍黒色で葯が白色であること』などから新種とされたようです。
 
私はホシクサの仲間ではシラタマホシクサしか見たことがなく、解説がなかったらこの花も素通りしていたかもしれません。

 

下は2021年3月24日、つくば植物園のこの池で見たコシガヤホシクサの新芽です。

ここはきれいな水が湧いていますが、2008年からの砂沼の播種実験はウエットスーツ・ウエイト・ゴーグル・シュノーケルなどで完全装備しても濁った水を誤飲するなど危険な作業だったようです。

検索すると越谷市でも2011年から越谷市農業技術センターにおいてコシガヤホシクサの栽培が行われていました。

 

ミズアオイ

 水葵 ミズアオイミズアオイ属の1年生の水草
 学名:Monochoria korsakowi
 別名:ナギ(水葱)
   分布:アジア東部
 
この池にはミズアオイも栽培されていて同時に花を見ることが出来ました。
ミズアオイもまた万葉集にナギ(水葱)として詠われ、古くから食材として用いられてきたようですが、近年減少し、環境省RDBでは準絶滅危惧種に指定されています。

 

草丈20〜50cm、沈水葉は線形、抽水葉は心形。葉柄の先に光沢のある葉を付けます。 

 

 和名「ミズアオイ」は葉がアオイの葉に似ていることに由来。

 

9〜10月、花茎が伸びて青紫色の花を多数咲かせます(総状花序)。

花は3数生で花被片は6枚。

 

雄しべは6本。このうち5本は短く、葯は黄色。

1本は異形雄しべでやや長く、葯は濃い青紫色、この花粉で自家受粉するそうです。

それにしてもなぜこれだけ青い葯になったのでしょう?

 

花はこんなにたくさん咲くのに1日花。

 
ミズアオイの葉もオンブバッタに食べられています。
オンブバッタはむしろミズアオイが本命だったかもしれません。
万葉集には「醤酢に 蒜樢き合とて鯛願ふ 我にな見えぞ水葱の羹」と詠まれています。

「ひしおすにノビルをつきこんだ和え物と鯛を願っている私には見せてくれるな。水葱の吸い物なぞ!」

ミズアオイの若葉は食用にされたものの、あまり美味しくはなかったようです。


ミズアオイを検索中、「ミズアオイを震災復興のシンボル」という記事に出会いました。
東日本大震災の後、津波を受けた岩手、宮城、福島の沿岸地域に突如としてミズアオイの大群落が現れたそうです。
かつては水田雑草であったミズアオイは除草剤などにより減少していました。
地中に埋まったミズアオイの種子が発芽するためには、耕運などの撹乱によって種が地表近くに出てくることが必要ですが、津波がそれを担ったものと考えられました。
その後も「災害遺産ミズアオイ」を守る活動が続いているようです。

 

 
 
 
 

初秋のつくば植物園2022(1)

 

ヒガンバナ

 彼岸花 ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草 

 学名:Lycoris radiata

   別名:曼珠沙華マンジュシャゲ

 原産地:中国

 分布:北海道や東北地方を除く日本全土

 

9月15日、久しぶりに行った植物園は早くも秋の気配が漂っていました。

池の中央のつくばね橋を渡ります。

 

橋を左に曲がると池のほとりのヒガンバナがちらほら咲き始めていました。

苞に包まれた蕾をもつ花茎が20〜60cm伸び出し、苞が破れると直径10〜15cmの花が数個、外向きに並んで開花します。

 

6日後の9月21日、再訪。

橋の上から左を見るとあずまやの下が赤く染まっていました。

 

ヒガンバナは貫禄が出てきたあずまやとよく合います。

古くから日本にあったような景色ですが、ヒガンバナは古い時代の日本には無く、救荒植物とか、糊の原料として中国から持ち込まれたという説があります。

 

この花茎からは10個くらいの花が種小名radiata の「放射状」の意味のように球形に開花。

細長い花被片6枚は大きく反り返り、雄しべ6本・雌しべ1本が長く突出しています。

やはりヒガンバナには何か妖しい美しさがあります。

 

今年はヒガンバナの名の如くお彼岸に満開になります。

日本のヒガンバナは3倍体のため種子が実らず、鱗茎で増えるので全て同じ形態です。

 

この植物園のヒガンバナは池のほとりに増えています。

子供の頃住んでいた東濃地方ではヒガンバナは畔道の花、庭に植えてはいけないと言われていました。

球根に毒性があるから誤って食べないようにという配慮だったのでしょうか。

しかし水に晒せば毒性が失われることがわかり、飢饉の時は助けになったようです。

 

にわかにその花の間を乱舞する2つの黒い影!

 

動きが早くて上手く撮れない。

 

ジャコウアゲハですね!

 

この園には「コヒガンバナ」もありますが、確認が遅れて今年は花期を逸しました。

ヒガンバナは中国に自生する2倍体のヒガンバナで種子ができます。

ヒガンバナより早咲きで花はやや小型といわれます。

種子ができるかどうか、今後の経過を見たいと思っています。

 

 

シロバナマンジュシャゲ

    白花曼珠沙華 ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草

 学名:Lycoris x albiflora

   別名:シロバナヒガンバナ( 白花彼岸花

 分布:日本全土、済州島、中国

 ヒガンバナショウキズイセン(花は黄色)の自然交雑種といわれます。

 

園の西側通路沿いにはシロバナマンジュシャゲが植栽されています。

ここはよく通る道ですから葉の観察も容易です。

2021年10月4日 元気な葉が育っていました。さらに茂って冬を越し葉は5月頃消えます。

 

2022年9月15日 次々と開花中でした。まだ顔を出したばかりの蕾もあります。

 

花の咲き方はヒガンバナと同じです。

 

雌しべの先(柱頭)が紅い花もありました。

 

昨秋、花後を観察しました。

もしかして種子ができるかもと思ったのですが、やはり不稔でした。

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ハナシュクシャ

花縮砂 ショウガ科シュクシャ属の多年草

学名:Hedychium coronarium

英名:ginger lily    →   ジンジャーリリー

分布:インド~マレーシア熱帯地域

   日本には江戸時代に導入。

 

良い香りに誘われて近づくと高さ1〜1.5mのショウガに似た葉が茂り、白い蝶のような花が咲いていました。

 

偽茎の先に穂状花序が出ます。

 

ジンジャー科の花の構造はとても難しい。

(以下、素人の記載ですから誤りがあるかもしれません。その際はどうぞお教えいただけますようお願いします。)

外側の細長い裂片が花冠、花弁のように見えるのが弁化した仮雄しべ。

 

この大きな唇弁(長さ・幅とも約6cm)が弁化した仮雄しべとは驚きました。

中央から飛び出しているのは1本だけ稔性がある雄しべ。

雌しべは筒状の雄しべの中を通り、葯の先端から緑色の柱頭が突出しています。

 

良い香りと花の美しさに魅せられてしばらく動けません。

下は雄しべの葯が開いて花粉が出ているところです。

この花はキューバニカラグアでは原産国ではないのに国花になっています。

香料の原料として栽培もされるようです。

 

隣に淡いオレンジ色の花が咲いていました。

名札を探しましたが見つかりません。ハナシュクシャの園芸種でしょうか。

 

同じような色の花がニクイロシュクシャと呼ばれていることもあるようですが、気の毒な命名に思えます。

花の構造はハナシュクシャと同じです。

 

1茎に咲く花の数が白花のハナシュクシャより多く、草丈も高く丈夫そうです。

ベニバナシュクシャ や キバナシュクシャもありますが、この色はサーモンピンクに近いかと思います。


繁殖は根茎によりますが、稀に種子ができることもあるようです。
また通る時覗いてみましょう。

この花も調べてみると難しく、また更新が遅れました。

 

チユウキンレン(地湧金蓮)

チユウキンレン(地湧金蓮)

 地湧金蓮 バショウ科ムセラ属の常緑多年草

  学名:Musa lasiocarpa

   英名:Chine Yellow Banana

  中国名:地湧金蓮

        原産:中国南部からインドシナ半島
 
 
1)みずほの村市場のチユウキンレン
今年6月、みずほの村市場の蕎舎さんの蓮池の南にチユウキンレンの大株を見つけました。
日当たりも栄養も良く、伸び伸び育っています。
太い茎に見えるののは偽茎で高さ60cm以下と。
(朝日百科植物の世界10-199)
大きな葉は長さ50cmほどの長楕円形。

 

左から眺めました。

確かに「地湧金蓮」の名の如く地面から湧き出た金色のハスのように見えます。

ハスの花弁のように見えるのは「苞」。

 

苞は直径20〜30cmくらいで、その付け根に数個の花が見られます。

同じバショウ科のバナナと同じ構造です。

 

残念ながら花は遅すぎて構造がよくわかりません。

朝日百科には「花序の基部に両性花と雌花が、上部に雄花がつく。花被片6枚、雄しべ5本」と記載されています。

下の写真では中心に雌しべが見えます。

 

もっと若い花が見たくて今月再訪しました。

しかし残念ながらヒマワリも撤去され、橋が閉じられていました。

中心部に新しい苞が育ち始めているようでしたからまたの機会のお楽しみです。

 

2)つくば植物園のチユウキンレン

実はこの花は淡路の花友達のお庭にあり、そのブログにしばしば登場して拝見していました。

チユウキンレンは2000年の淡路花博で初めて披露され、大変な人気を呼んだそうです。

 

2018年秋、私は当地に転居、つくば植物園にも小株があることを発見しました。

2018.12.27. 防寒対策でしょうか、綿帽子を被ったような姿でした。

 

植えられているのは大きな温室2棟の間の中庭、ミケリアの隣です。

その後は数枚の葉のみでしたから写真も撮らず素通り。

2021. 1.27. こんな哀れな姿、もう枯れてしまったのかと思いました。

しかし原産地では -10℃までも耐えた花ですから、苗を植えたときは防寒したものの、その後は -8℃になるつくばの低温にも無防備のままだったのでしょう。


2021. 6. 3. 確かに元気な葉が出ていました。

 

2022. 6. 5. 今年は初めて花を見つけました。

まさに地面から湧き出て開いた金色の蓮です! 隣のマンホールは興醒め。

 

花はひっそり、泰然自若。

中国では標高1000〜2500mの山の斜面に分布。

雲南省では農家の生垣に植えられたり、地下茎と偽茎が豚の餌にされたりするそうです。

 

今夏は暑くて植物園へも行く気にならず、空調頼りに家に篭っていました。

9月16日、涼しさに誘われて確認に行くと、こんなに葉が茂っていて驚きました。

 

偽茎は2本、既に花も数段咲いたようです。

 

柵もないので接近してスマホ撮影ができました。

既に花期終盤なのが残念です。

 

右上の花には小さなアリがたくさん集まっています。

蜜がたっぷり出ていたのでしょう。

 

やはり植物園に行くと元気が出ます。

最近は夏ごもりでフレイルが進んで、もう植物園も無理かと心配していたのです。

杖を手にスマホだけ持って園内に入ると、馴染みの植物が次々と導いてくれるように感じられ、あれもこれも確認したくなりました。 

それらはまた 次回に。

 






巨大水車とハス(藕糸蓮)

巨大水車

つくばには「みずほの村市場」という有名な農産物の直売所があります(1990年設立)。

ここには毎日地元の新鮮な野菜や果物などが並び、奥には園芸センターもあり、花や野菜の苗・鉢物・生花まで揃っていて、高齢になってから転居した私には誠にありがたいお店です。

さらに隣には「蕎舎」さんがあってこだわりの「常陸秋そば」がいただけるのです。

建物は150年前の農家を移築したという古民家、土間には竈(かまど)もあります。

ここ3年、コロナ禍のためお蕎麦が躊躇われるのが残念です。

 

建物の西側に直径7mの巨大水車があります (2022年4月14日)。

 

20年間、回り続け老いて苔蒸した水車ですがまだ現役でした(2021年9月)。

一回分の精米に48時間かかるそうです。

 

どこも古色蒼然! ゆっくり回っています。

 

今春はますます苔蒸していました(2022年4月14日 室内から撮影)。

店主はこの水車を再建すべきか否か悩まれたようですが、これを後世に遺す義務を感じ、リニューアルプロジェクトを立ち上げられました。

4月26日 解体工事開始。

こんな大きな木製水車を造れる職人さんはもう全国に数人しかないそうです。

 

総工費約800万円、クラウドファンディングで一部を補い、2か月後再建されました。

7月29日、すでに新しい水車がゆっくり回転していました。

右下は撤去した旧機の中心部です。

 

「藕糸蓮(ぐうしれん)」

   蓮 ハス科ハス属 の多年生水生生物

 学名:Nelumbo  nucifera

 

蕎舎さんの南側には毎夏ハスの花が開きます。

その向こうはひまわり畑。ここはひまわり迷路が楽しめるところです。

 

このハスは茨城県の蓮根農家 八島八郎氏が品種の改良を行い、藕糸蓮と命名された希少種だそうです。

 

藕糸蓮は花付きがよい八重の品種です。蓮根は採れません。

現存するハスは100品種くらいあるそうです。

2000年前の泥炭層から発掘された種子から芽生えて花開いた「大賀蓮」は一重です。

 

藕糸蓮の花は濃いめのピンク色。開花は7〜9月。

 

蕾の頃。

 

咲き始め。

 

花弁は100枚以上、小さい花弁は雄しべが弁化したものだそうです。

 

花弁がするりと落ちました。

 

藕糸織(ぐうしおり)

藕糸蓮の茎からは繊細な繊維が少量採取でき、これで織った織物を藕糸織といいます。

しかしこの繊維は蜘蛛の糸のように繊細で、製糸には複雑な手間がかかり、ミャンマーの藕糸織では10mの布を織るのにハスの茎が1〜2万本要るといわれます。

こうして出来上がった布は意外にも軽やかではなく、むしろ地厚の布で、飾りを付けて仏像にかけたり、僧の袈裟にされるのだそうです。

 

平成13愛子内親王のご誕生を祝い、土浦市八島農園の花蓮から300人のボランティアが蓮糸を取り出して織り、ゴヨウツツジの御紋を入れた藕糸織の袱紗に仕立てて献上されました。

 

碧筒杯(象鼻杯)

またここでは2009年から「碧筒杯」といって、この蓮の葉に酒を注ぎ茎を通してそれを飲む催しがありましたが、最近は行われていないようです。

碧筒杯は象鼻杯、蓮葉酒とも言われ、ハスの葉の茎と繋がる部分に穴を開けて飲み物を流し、漏斗状にして長い茎の下端から飲む遊びです。

 

 

 

酷暑の和の庭

各地で豪雨の被害が出ていますが、つくばは降水量少なく厳しい夏です。

今朝やっと少し涼しかったのは束の間、午後はまた厳しい残暑が続いています。

第7波と残暑の夏、空調管理下の居間で前の庭を見ながら暮らす日々です。

前庭の左側は和風空間、真夏は花がありませんが、さまざまな緑が楽しめます。

これは今日10時過ぎ、ギラギラと暑い庭です。

 

ここは2019年2月和風コーナーとして造られスギゴケで覆われました。

旧宅から移植したツバキ侘助(左)とナツツバキ(右)の間にアセビを追加。

 

2020年6月 ナツツバキはしっかり根を張り、たくさんの花を付けました。

心配したスギゴケも思ったより順調に育って緑の絨毯のようです。

 

ところがその後、猛暑とモグラの侵入で維持困難になり、ついに今夏は身の安全重視でスギゴケを諦めることにしました。

朝夕の水遣りに加えて、草取り・落葉拾い・サッチングなどしゃがんでしなければならない作業が多いのです。しかも小椅子は使えません。

 

中央のアセビは昨年から元気がなく、葉の色が冴えません。

それでも少しは花を咲かせ、赤い新葉も見られるので回復を待っています。

 

ツバキの南側、隣地との境界の塀の前に植えた植物たちは意外に元気です。
左からギンモクセイ、シモバシラ・斑入りヤツデ。

 

トキワエゴノキ

この木は左のソヨゴ、右のツバキの間に倉庫が見えるのを隠すために、2019年4月追加で植えました。しかしその後3年間は花も咲かず、冬季は葉の色も褐色がかって目立たず、忘れられた存在でした。

下部では左からヤツデが侵入、右から冬咲クレマチスが這い上がって冬の間花を咲かせていました。

 

そのトキワエゴノキに今年5月、初めて花が咲きました。小さな白い花です。

葉はやや褐色がかった緑色で葉の長さは7〜8cm。


近くで見るとピンクの萼にと白い花弁の蕾が下垂。

 

開花すると5枚の花弁が巻き上がってなんともかわいい花でした。

 

最近こんな実がなっているのに気付きました。

改めて「トキワエゴノキ」を検索してみましたが、何故か学名も明記されていません。

東南アジア原産のようで中国では山茉莉と呼ばれてるとか。

しかし園芸界では人気があってかなり流通しているようです。

 

イヌシデ

 犬四手、犬垂、カバノキ科クマシデ属の落葉高木
 別名:シロシデ
 学名:Carpinus tschonoskii
 分布:岩手・新潟両県以南、朝鮮半島、中国
 

我が家のイヌシデは3年前プランターの付属品としてこの庭に来ました。

 

昨年までは8月になると落葉が始まっていましたが、今年はまだ元気です。

プランターの底から地中に根を伸ばしたのかもと推察しています。

 

この木の一番美しいのは春の芽吹きの頃(2202.4.11.)。

 

葉の側脈は12〜15対(近縁のクマシデは20〜25対)。

 

雌雄同株で雄花・雌花が下垂するそうですが、それが見られるのは何年後でしょうか?

 

ウラハグサ(フウチソウ)     ←2022.8.21.更新

         裏葉草    イネ科 ウラハグサ属の多年生草本

         学名:Hakonechloa macra
         別名:フウチソウ(風知草)

   分布: 関東地方西部から紀伊半島

つくばいの前のウラハグサは花穂が出て風に靡いています。

初めフウチソウと記載しましたが、正式和名はウラハグサでした。

学名は箱根のchloa(草)、箱根近くに多く見られるからだそうです。

葉が表裏反対になっているからウラハグサ。

園芸店ではフウチソウとして販売され、私は今日までそれが和名かと思っていました。

改めて調べてみると和名はウラハグサ、命名牧野富太郎博士でした。

 

庭には四季折々、鳥やチョウも訪れてくれます。

今年はヒヨドリが少ないよう、最近はハクセキレイムクドリが多い。

スズメも暑いのか砂浴びではなく、つくばいで水浴びをしていきます。

ムクドリ軍団も撮ったのですがガラス戸越しですから写真がボケて残念。

このハクセキレイは3羽1組でした。

猛暑と新型コロナ第7波、厳しい夏でした。

ブログもスランプ、やっと一番身近なところを記載しました。

 

ガガブタ・アサザ・ミツガシワ

暑中お見舞い申し上げます。

今日も猛暑の日になりそうです。

せめてひとときたりとも涼しげにと今回は水生植物を取り上げました。

 

昨年12月つくば植物園の水生植物温室でガガブタの花を初めて見て感激しましたが、季節感が合わず保留してあったのです。

調べてみるとミツガシワ科アサザ属。

今回はつくば植物園のミツガシワ科アサザ属3種をまとめます。



ガガブタ

鏡蓋 ミツガシワ科アサザ属の多年草

学名:Nymphoides indica

分布:アジア、アメリカ、アフリカ、オーストラリアの温帯域、

   日本では本州以西

 

ガガブタはかっては平野部の湖沼や溜池で普通に見られる植物だったそうですが、最近は著しく減少、各地で絶滅が案じられています。

ガガブタとは また気の毒な名前に思えますが、その葉を鏡箱の蓋になぞらえて「カガミブタ」とよんだものがなまったのだそうです。

 

スイレンのような葉の近くに清楚な白い花が咲いています。

 

水底から長いを伸ばし、長さ20cmにもなる浮葉を展開します。

スイレンは水底に地下茎があり、そこから長い葉柄が水面まで伸びて葉を開きます。)

葉には短い葉柄(長さ1〜2cm)があり、その基部から花柄が束生し1〜2花づつ開花。

花ははかない1日花、夕方には水中に沈みます。

 

花の直径は約 1.5cm。一般には5弁、ここでは6〜7弁も多い。

花期は7〜9月ですが、ここは温室、真冬でも花が見られるのです。

花冠裂片の内側にたくさんの白毛があってこれがまた美しい。

この白毛は確かにミツガシワの白毛によく似ています。

雄しべ5個、雌しべ1個。

ガガブタにも花柱が短い短花柱花と花柱が長い長花柱花があり、両者が混生しないと結実しないそうです。これはどちらでしょう?

 

水中に長く伸びているのは茎です。

葉柄の基部に夏から秋にかけて根が変形して房状になった殖芽が形成されます。

この殖芽からまた長い茎が伸びて繁殖するのです。

米国産の「ハナガガブタ」はこの殖芽がバナナの房に似るので「バナナプラント」とも呼ばれるそうです。

 

左上は花が終わった後、種子が出来るかどうか、また見に行ってみます。

今はまだ暑くて植物園に行く気になれません。



ミツガシワ

 三槲 ミツガシワ科ミツガシワ属の多年草

 学名:Menyanthes trifoliata

 

ミツガシワについては既に 2019-04-18 の記事にしましたが、その後の観察を加えて再掲します。

今回は2022年4月19日のつくば植物園のミツガシワです。

中央広場からつくばね橋へ向かい、左の木道へ降りました。左側は一面のミツガシワ。

 

右側もつくばね橋の下までまた一面のミツガシワで覆われています。

ミツガシワは西シベリアでは斬新世(3800万〜2400万年前)から、日本でも鮮新世(510万年〜170万年前)末期から在ったそうです。

 

ミツガシワには雌しべの柱頭が長く突出する長柱花と、柱頭が雄しべの葯を越えない短柱花がありますが、この池のミツガシワは長柱花です。

 

高さ20〜40cm、総状花序に20〜30個の花をつけます。

花冠裂片の内側に縮れた長毛を密生。これはガガブタとそっくりです。

 

果実は蒴果、長柱花では数個の種子が出来ます(2019.6.2.)。


但しこの池は冬はミツガシワが枯れ、淋しい景色になります(2020.1.30.)。

 

それでもー8℃にもなるつくばの寒さにも耐え、早春芽生えます(2020.1.30.)。

 

3月下旬から開花が始まります(2022.4.3.)。



アサザ

 浅沙 ミツガシワ科アサザ属の多年草

学名:Nymphoides peltata 

分布:ユーラシア大陸温帯地域、日本では本州以西

花期:5〜8月

日本産のアサザ属の中で唯一の黄色の花。

つくば植物園ではミツガシワの池のすぐ隣で咲きますが、接写出来ない距離で残念です( 2019.6.2.)。

                                                                                                                

和名は水深の浅いところに生えることからの「浅々菜」が転じたとか。

ジュンサイと同じく茎と新葉が食べられ、ハナジュンサイとも呼ばれるそうです。

花の直径:3〜4cm。

葉の長さ4〜12cm。葉の縁に荒い鋸歯があります。地下茎を伸ばして繁殖。

 

アサザの花も朝開いて夕には閉じる1日花です。


精一杯拡大しました。

5裂した花冠の周辺にはたくさんの細かい切れ込みがあります。 

 
アサザ万葉集にも長歌で1首登場しています。
 
まずは恋人のところへ通う息子を按ずる親から
  うちひさつ 三宅の原ゆ 
  直土(ひたつち)に 足踏み貫き
  夏草を 腰になづみ  
  いかなるや 人の子ゆゑぞ
  通はすも我子(あご)
 
息子からの返歌(あざさはアサザ
  うべなうべな  母は知らじ うべなうべな 父は知らじ
  蜷(みな)の腸(わた) か黒き髪に  
  真木綿(まゆふ)もち  あざさ結ひ垂れ 
  大和の 黄楊(つげ)の小櫛(をぐし)を
  押へ刺す うらぐはし子 それぞ我が妻  
                      巻13-3295 作者未詳


私には細かい言葉はわかりませんが、「夏草を腰に絡ませて恋人のところへ通う息子を按じる親の気持ち」や「黒髪に真木綿でアサザを飾り、貴重な『黄楊の小櫛』を差した美しい娘さんだから心配しなくて良いよと言う息子」が想像できて楽しいひとときになりました。



 

空梅雨の庭 2022

今年関東地方の梅雨は6月6日から6月27日(22日間)、平年の約半分でした。

つくばの6月1日〜7月11日の降水量は合計でわずか45.5mm。

その上最高気温36.8℃、連日猛暑が続きました。

にわか雨の天気予報もほとんど外れ、毎夕水遣りのつらい日々でした。

せっかく植えたキュウリは下半分が細くなって曲がり、ナスは太短か。

7月12~14日、やっとまとまった雨が降りました(計43.5mm)。

天からの恵みは平等に庭の隅々まで潤します。

人も植物もほっと一息!

この厳しい夏にこの庭で咲いた花達を記録します。

 

アスチルベ

ユキノシタ科チダケサシ属の多年生植物のアワモリショウマ(Astilbe japonica)やチダケサシなどから創られた園芸品種。

南の塀の蔭のアスチルベは「ヤマアジサイ七変化」と偶々花期が揃いました(2022.6.8.)。

 

チダケサシの花は円錐状の花序にたくさんの花がつきます。

アスチルベはさらに花数が多い。

チダケサシの花は花弁5枚、雄しべ10本、雌しべは2心皮が基部で合着と。

さらに花数の多いアスチルベでは花の構造は分かり難いですね。

 

東のボーダー花壇のアスチルベは茎が枝垂れました。

 

南庭のは淡いピンクで直立。

 

6月18日の南西の庭

中央はアジサイアナベル’、咲き始めは純白です。

周りはパステルカラーの宿根草が囲みます。

狭い庭では紫青色・淡いピンク・白・淡黄色.....これくらいに絞れば後が楽です。

 

 

ゲラニウムフウロソウ

ゲラニウムについては2021年5月20日「初夏の庭」に5種記録しました。

  ゲラニウム サンギネウム ストリアタム(ピンク)・(白)。

  ゲラニウム サンギネウム マックスフライ

  ゲラニウム ミセスケンドールクラーク

  ゲラニウム ビオコボ

今年はゲラニウム ジョンソンズブルーが加わり、ビオラと交替して初夏の庭の主役になりました。愛知の庭では夏越しがたいへんでしたが、こちらでは大丈夫です。

 

ゲラニウム ジョンソンズブルー

 

 

ゲラニウム・サンギネウム ストリアタム(アルバ)。

 

ゲラニウム ミセスケンドールクラーク

 

やや派手なゲラニューム サンギネウム マックスフライ はタンチョウソウの後に。

 

北庭は自生のヒメフウロがグランドカバープランツになりました。

昨年はここに繁茂しすぎたシラユキゲシをせっせと抜去。

 

ヒメフウロの紅葉。

前部は洋種イブキジャコウソウ(クリーピングタイム)。

 

西庭

7月7日、アナベルの花は淡緑色に変わりました。左はシキンカラマツ。

ユウスゲは6月29日より開花、毎夕賑やかです。

 

タリクトラム・デラバイ?(シキンカラマツ?)

前の庭にあった2株を転居後に送ってもらいましたが1株は枯れました。

愛知では初めに植えたタリクトラム・デラバイがシキンカラマツとどう違うかを確認しようと「シキンカラマツ」を購入したのですが、どちらが残ったのかわからなくなりました。

 

タリクトラム・デラバイ(オオシキンカラマツ)は中国原産で花は直径2cmほどと記載されています(朝日百科植物の世界8-285)。

シキンカラマツの自生地は福島・群馬・長野・茨城。

我が家のシキンカラマツ?は大きい花で直径15mmです。

 

ユウスゲ

西庭ではユウスゲの長い茎が10本以上170cmほどの高さに伸びて競って開花しています。

今夏は昆虫も少ないためほとんど受粉せず、毎朝花殻摘みをせざるを得ません。

しかし東庭と南庭の株は樹木の陰になったためか、今年は花茎が上がらずがっかりです。

 

アガパンサス 

ヒガンバナ科アガパンサス亜科(←アガパンサス科)の多年草

南アフリカ原産

 

ユウスゲの後方にはアガパンサスが2株、右はやや濃色で花も多い。

寒さや乾燥には強い花ですが木々が茂って日照不足気味です。

 

 

オウゴンヤマユリ

この花についてはすでに2020年7月14日2021年7月15日の記事に書きました。

今年も南庭の株は高さ160cmくらいになって 7花 開花。

 

2年前 家庭菜園の端に埋めたむかごが育ってミニトマトとコラボ。

寒風が吹き抜けたこの家庭菜園で九州は対馬原産のユリが無事越冬開花したことは感激でした。今年ももうたくさん「むかご」が出来ています。

家庭菜園ができなくなったら百合園にしてもいいですね。

 

ヤマユリ

これも昨年ヤマユリ と オウゴンオニユリ 2021に書きました。

今年は周りにあったサルビアが寒さで消え、まさに王様然として堂々16花開花。辺り一面に芳香を漂わせていました。

 

猛暑のせいか昨年悩まされたユリクビナガハムシの発生はなくて助かりましたが、日照りと水不足で葉焼けをさせてしまいました。

 

暗いニュースが多すぎる昨今、庭を眺める時間が増えました。

おかげさまで居間の前は木々や芝生の緑で覆われ、何かしら季節の花が咲きます。

それどころではない人々に申し訳なく思いつつ庭を眺める日々です。